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【完結】後輩がまた違うバイトしてる〜なんで俺の行先知ってんの?〜  作者: 仮面大将G


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第43話 陶芸教室

 心音に面接された会社の結果が気になるところだけど、とりあえずこれで就活は終わり。これで落ちてたら俺は就活浪人だ。卒論も出しちまったし、もうやることがねえな……。暇だ。


 大学4年の1月ってこんなにやることねえのか。3年生まで真面目に授業受けてたからゼミ以外の授業も残ってねえし、とにかくやることがねえ。どうしようか……。こんなに暇だと趣味とかあれば良かったと思っちまうな。


 そんなことを考えていると、ふと昨日ポストに入ってたチラシが目に入る。陶芸教室……? やったことねえけど、これはいい趣味になるかもな。社会人になっても続けられそうだし、体験だけなら無料らしい。もし合わなかったら体験で終わればいいもんな。1回行ってみっか。


 俺は適当に着替えて準備をし、陶芸教室のチラシを持って外に出た。



「ここか。なんか威厳ありそうな家だな」


 チラシに載っていた地図通りに来て、着いた場所は昔ながらの日本屋敷。入口にはチラシと同じ陶芸教室の文字が貼り付けてある。こんなとこでやんのか……。なんか緊張してきたな。やめとこうかな。


 いやいや、せっかくここまで来たんだから、体験だけでもやっていこう。そう決めた俺は、インターホンを押した。少し待つと、元気な女の声がインターホンから聞こえてくる。


『はーい! 家事ですか? 救急ですか?』


「俺119に電話してねえよ! 陶芸教室の体験に来たんす!」


『あ、体験の方ですねー! お迎えにあがりますので、少々お待ちくだされー!』


「なんだその語尾は……。元気な人だな」


 でもなーんか聞き覚えある声のような気がすんだよなあ……。うん、すごく嫌な予感がするけど、流石に陶芸教室であいつはいねえだろ。いたらびっくりだわ。


 不安になりながら待っていると、木の扉が開いて見慣れた茶髪ボブが顔を出した。


「おいやっぱ心音じゃねえか! お前ほんとどこにでもいんな!」


「えーっと、1億2380万2000人でご予約のオースティン様で?」


「違うけど多分それ俺含まれてんだろ! 日本の人口じゃねえか! オースティンが日本を代表して予約すんなよ!」


「やっほやっほ健人先輩! 今日はどうしたの? お茶でも飲みに来たの?」


「陶芸教室って書いてあんだろここ! なんでそっち側が目的知らねえんだよ!」


「そっかそっか! 陶芸教室ね! おっけおっけ!」


「お前まさか適当にこの教室開いたとかじゃねえだろな!? なんだその反応!?」


「まあまあだいじょーぶだよ! ほらほらとりあえず上がって!」


「信用できねえんだけど!? お前ほんとにできんだろな!」


 心音が出て来た時より心音が出て来てからの方が不安になってんじゃねえか。今まではとりあえず仕事はできてたみたいだけど、今回はほんとにできねえんじゃねえの? せっかく趣味にしようと思ったのに、こんな調子じゃダメだろ。


 心音に着いて部屋に通されると、椅子の前にろくろが置いてある洋室に入った。なんで洋室なんだよ。日本屋敷なんだからしっかり和室にしとけよ。いや確かに陶芸教室ってこんなイメージだけども。


「じゃあ早速始めていくよ! ちなみに今まで陶芸をやったことは?」


「やったことねえな。今日初めてだ」


「そっか! おっけおっけ! そっか、初めてか……」


「おいまさかお前も初めてとか言わねえだろな!? 不安しかねえぞその反応!」


「まっさかー! ちゃんと2回目だよ!」


「めちゃくちゃビギナーじゃねえか! よくお前そんなんで教室開こうと思ったな!」


「じゃあまずはこのところてんを」


「しまえ早く! そんなもん使わねえだろ!」


 もう早速ダメそうじゃねえか。陶芸って粘土とか使うもんじゃねえの? なんでところてんスタートなんだよ。できあがったらプルプルになりそうじゃねえか。


「じゃあこのろくろに粘土を置いてね!」


「おう、こうか?」


「うん! 多分!」


「頼りねえ先生だな!」


 一応心音はろくろの動かし方を知ってるらしく、レバーを踏んで回すのだと教えてくれた。ろくろが回転し出して、俺が置いた粘土が回っていく。


「おい心音、この後どうしたらいいんだよ?」


「とりあえずブロッコリーとかウインナーをこのフォンデュフォークに刺してもらって」


「これチーズフォンデュじゃねえよ! 粘土付いたウインナーとか食えねえだろ!」


「あ、パンも要る?」


「要らねえわ! だからチーズフォンデュじゃねえって!」


 ずっと何を言ってんだこいつは……。絶対ろくに陶芸できねえじゃねえか。おいおい、こんなんに金払いたくねえぞ。チーズフォンデュさせようとしてくんだもん。


「で、どうしたらいいんだよ?」


「なんかもう適当に形作っちゃって!」


「適当にって……。何作ればいいか分かんねえよ」


「なんかあるでしょ! 木彫りの熊とか」


「もう木彫りって言っちゃってんじゃねえか! これ粘土なんだわ!」


「じゃあ適当に木星とか作っときなよ」


「投げやりになんなよ! 面倒くさいのはこっちだわ!」


 俺たちが騒いでいると、廊下を走ってくるような足音が聞こえてきた。なんだ、心音の他にも誰かいんのか?


 扉が開いて着物姿のおばさんが慌てて入って来る。


「心音ちゃん! 何をしてるの一体!」


「あ、お母さん! 陶芸教室だよ!」


 お母さん……? え、ここって心音の実家のか!?


「あなた陶芸なんて1回子どもの頃にやっただけでしょう! なんで教室なんか開いてるの!」


「それはまあなんかできそうだなって」


「あ、そちらの方は生徒さんですかね……? すみませんうちの娘が……。もうお帰りいただいて結構ですので……」


「ええお母さん! これからが本番なんだよ!」


「お前面倒くさくなってたじゃねえか!」


 結局俺は外に出され、扉の横にあった陶芸教室の文字は剥がされてしまった。うん、もう来ないようにしよう。

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