ep.9|幕間|皇都学術院大学のとある授業風景1 ★キャラ画公開
「ハロハロー! 今日もめっちゃこんにちゃ☆ リリルラ先生の時間外特別授業始めるよおー! 今日も授業を受けるのは……テラスちゃん一人だけだねよろしくね(笑)!」
いつものように元気に授業を始めるリリルラ。
「……はーい」
爪をいじりながら低いテンションで返事をするテラス。
「あれあれえーー⁈ テラスちゃんテンション低いナリね? 三千年の歴史が輝くこの『ウェトマ皇国』で、皇国の象徴たる『神皇様』がおわせられるのはここ『皇都』。そんな皇都の最高学府(笑)で繰り広げられる特別授業だよー⁈ テンションたのむよおおおお」
しつこくテラスに絡むリリルラ。
「……はあーい」
爪から目線を切らないテラス。
「まあいっかなんでも! 楽しいから! ということで、今日は改めて『四元素』について復習するよお」
元気いっぱいなリリルラ。
「……」
呆れ顔でリリルラを見上げるテラス。
「皇国に住む人たちは『四元素』(火、風、水、土)のどれかと相性がいいと言われてマース。料理人の人たちなんかには『火属性』との相性がめっちゃ重要と言われてるよね⁈ 学校で習う『イグニス』の魔法陣を覚えて、研鑽を重ねることでそれを自在に操り、その火力の機微を見極め、最終的には最大火力で豪快に仕上げることで……至高の絶品パラパラチャーハンが完成するわけです! 火属性持ちの料理人がいるのといないのとじゃゼンッゼン仕上がりが違うからココはほんと、めっちゃ大事!」
目が爛々と光リリルラ。
「……(ゴクリ)」
呆れながらも生唾を飲み込むテラス。
「そしてなんと……火属性の上位互換である伝説の火属性精霊『サラマンダー』と契約してご加護をもらっちゃった料理人がいるお店に……先生はこないだ行って来ちゃいました! その名も『サザゼンカ』。皇都の外れにひっそりと佇む重い扉。知る人ぞ知る完全紹介性の桃源郷、それでも予約は一年待ち。戦場でその力を振るえば英雄と称えられる『精霊魔法』を惜しげもなく使った奇跡の火の共演。ああ……思い出しただけで気を失いそうになるワワワワ……」
瞳孔が開いているリリルラ。
「……っ」
前のめりになるテラス。
「でもでも経営目線で行くと、当然、火属性持ちだけじゃなくっていろんな属性が重宝されマース。中でも『水属性』は隠れ重要キャラなわけ。もちろんサザゼンカにはいらっしゃいます。豪華に3名も! 例えば『ウォトレ』を使える子が従業員に一人いるだけで、お店の水回りの設備投資も全然違ってくるし、お水を贅沢に使った煮炊きもできて、洗い物もその場で出した新鮮なお水で超衛生的に完結。修練を重ねる事で軟水硬水の出し分けを実現し、お料理にあったお水で高度な調理を……」
捲し立てるリリルラ。
「せんせーお腹が減るのでその辺でやめてくださーい(怒)」
苛立ちを隠せないテラス。
「ごめんよごめんよー。でも先生はもう、サザゼンカの虜なんだよー(涙)」
遠い目をするリリルラ。
「サザゼンカのシェフはなんとウェスト地方出身。彼の修行の日々は波瀾万丈だった……故郷のウェスト地方を出て南へ──皇国のシンボル、死ぬまでに一度は行きたいけど庶民は実際なかなかいけないから遠目に見るだけだよね観光地ランキングNO.1(リリルラ調ベ)の『不二霊山』を横目に見ながらの長い旅路を経てたどり着いたのは皇国最大の商業都市『イエド』。そのイエドでの老人との運命的な出会い──その老人は、加熱したい食材の表面温度が高くなり過ぎないうちに必要な熱エネルギーを投入し素早い物体深部温度上昇で全体をより均一な仕上がりにする火魔法の妙を開発したあの伝説の……」
「な、な、、長えええええ!」
早口で捲し立てるリリルラの長口上に叫ぶテラス。
皇国最高学府の放課後はまだまだ長い──
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