ep.4 プロローグ4
──砲弾の音と衝撃波。周囲の空気は熱と煙の重みに満ち、負傷兵と思しき呻き声が一面を埋め尽くている。
朽ちた鳥居が残響に抗い、廃屋同然の神殿が突如、純白の光で包まれた。そこには異質な模様の、見慣れない服に身を包む大柄な男の姿があった。
「──魔族の新たな魔法か⁉︎」
疑念と恐怖に駆られた兵士たちがジリジリと、呆然と立ち尽くす男への包囲の輪を狭めてくる。
「な……なんだここは……」
粉塵が舞う戦場でなんとか目を開き、則島鉄平は迷い込んだ戦場の状況を理解しようと努めていた。
* * *
──二人の巫女が静かな祈りを捧げる中、篝火は静寂を破り、突如、金色の煌めきを放つ柱となって天へと昇った。その光は、周囲の空気を震わせ、神域の社殿を山吹色で包み込む。
神がおわすはずの社殿中央の空間には、長身の女性が時間の流れを留めたかのように静かに横たわっていた。
「──か、神の使いか……⁇」
儀式に参加していた周囲の老人も慌ててその周りを囲む。
「ど、どうゆうこと……⁇」
目を開けた舞坂詩乃の周りには、和装に似た着物を着る人々の姿があった。何度、目を擦っても彼女の前には富士の木々は戻ってこない。
* * *
──神幸祭のボルテージが最高潮になる御旅所前。三基の神輿を担ぐ数十人の担ぎ手と、数百人の群集が狭い道に入り混じっている。その上質な混沌が沸騰しようとする時、紅い光と共に、神輿が戻るべき台座に長身の男が姿を現した。
「──な、なんだあああああ?!」
群集の掛け声が悲鳴に変わり、祭への期待と不可思議な現象への恐怖が入り混じり、周囲は混沌の色を濃くしている。
「ど、どうもこんにちは……」
混沌の中に生まれた一時の静寂を突くように、吉田竜之助の間の抜けた声が、紫がかった空へ昇っていった。
* * *
──晴れ渡る青空に巨大な入道雲が優しさと威圧感を携えて浮かんでいる。陽の光は静かに波打つ海に反射し、辺りは柔らかな光で満ちていた。
朱色に染められた大鳥居を背にして海に浮かぶ神殿中央の能舞台に、金髪の少女が姿を現した。その髪は太陽の光と海の反射を受け、淡い碧色に彩られていた。
「う、美しい……」
両手一杯に抱えた画材を全て落とし、乾いた音と共に砕け散ったアズライトが青年の素足を藍色に染める。彼は目の前の異変に驚きつつも、非現実的な光景を前にどこか冷静だった。
「け、けんごぉぉ……」
越野紗英は涙を浮かべ謙吾の名前を呼ぶことしかできなかった。
4人が異世界に!みんな頑張って!
ここまで読んでいただいてありがとうございます。ブックマークと☆のワンクリックが本当に励みになります! 楽しんで読んでいただけるように頑張りますのでどうぞよろしくお願いいたしますmm
※Xでキャラと遊んでいます。ぜひこちらもお立ち寄りください
https://x.com/fujikoshinoryuu