ep.28|ミナト家|鬼の里3
ここは別名『五瀬の里』。神皇様たちにお仕えして、タイソウの時にはレイキュウをホウヨする特別な一族の里。
今、私たちはこの里のデントウとホコリを胸に、お祭りの準備に追われてる。里の雰囲気はいつもと違ってすごく賑やか。そんな中、数年ぶりに里の外から人が来たって大人たちは朝から大騒ぎしてる。
昨日のお兄ちゃんたちのことだよね! 里長の屋敷に入って行くのを見たもん! でも、昨日のヒメちゃんとの秘密のお稽古をばらされたら……また怒られちゃうなあ……大人たちには黙ってて欲しいんだけど……大丈夫かなあ?
──お祭りで笛を吹いていいって言われてからもう二年、私とヒメちゃんは本当にたくさん練習した。花の舞では、私たちの組が演奏する予定。とっても楽しみ! あの舞台で、私たちの笛が里中に響き渡るのを想像するだけで、もう胸がドキドキする。
それにしても昨日のお兄ちゃんの笛は、お師匠様よりも上手だった気がする。一緒に練習できたら、私たちももっともっと上手くなれるかもしれない! 里の外の人たちは、みんな笛が上手なのかなあ。お師匠さんが、笛が上手なら心も綺麗って言ってたけど、お里の外の人たちはみんな心が綺麗なのかなあ?
ライコウ兄ちゃんが帰ってきたら、お外の話をもっと聞いてみたいなあ。早く帰ってこないかなあ。里の外の景色、心が綺麗な人たちの様子、そこで奏でられてる綺麗な音色、もっともっと知りたいな。また楽しみができちゃった! ライコウ兄ちゃんの帰りを待ちながら、今日もヒメちゃんと一緒に笛のお稽古続けようっと。
* * *
昨日のお兄ちゃんたちが里長のお屋敷から出てきたぞ!
目があったら、なんだか気まずそうな顔をしてた。何だろうと思っていたら、お兄ちゃんたちは昨日の私たちの秘密の練習を大人たちに告げ口したらしい……横にいたお師匠さんがちょっと怖い顔をしていたから、絶対後で怒られる……なんてことをしてくれたんだ……これは、なんとしてもお笛の極意を教えてもらって借りを返してもらわねば……
「──ほんとごめんって! お詫びに笛の練習は思う存分付き合うよ!」
そうお兄ちゃんが言ってくれた。
お兄ちゃんからゲンチを取れたので、今日は笛のお稽古に付き合ってもらおうっと! エイユウさんのお当番でいなかったヒメちゃんも喜ぶぞ! ヒメちゃん早くお勤め終わらないかなあ。
* * *
お師匠さんも一緒ならいいよってことで、これからお兄ちゃんたちとお師匠さんと一緒にお稽古だ! 特別に里の外れにあるヒメちゃんと私の秘密の練習場にみんなを招待してみることになった。
「もうバレちゃったなら仕方ないね! すっごくいい景色なんだから!」
いつだってヒメちゃんは思い切りがいいなあ……海が見える小さな森の中の秘密の練習場。風が通り抜ける度に木々がささやくように話しかけてくれるとってもお気に入りの場所。みんなも「綺麗だね」って褒めてくれて嬉しかった!
──そこで吹いてくれたテオお兄ちゃんの笛の音はまたしても、またしても素晴らしかった! なんて綺麗な音色なんだろう。テオお兄ちゃんの笛を聴いていると、まるで別の世界に連れて行かれたような気持ちになる。こんなに上手になれるんなら、私も里の外にいつか出てみたいな。
お稽古の合間に、ケンゴお兄ちゃんにも「何かできないの?」って聞いたら、気まずそうに笑って「魔法で笛を綺麗にしてあげるよ」と言って、私の笛を手に取った。その手つきは優しくって、まるで笛に語りかけるように見えたんだ。そしたらケンゴお兄ちゃんの手元が光って、急に笛がピカピカになった! なんじゃこりゃ⁉︎ ってみんなで思わず笑っちゃったけど、綺麗な笛で調子いいよ! ありがとうケンゴお兄ちゃん(笑)!
今日はたくさんの人と一緒にお稽古できて、気づいたらもう夜になってた。今日も星が綺麗だったなあ。今夜も上手に吹けたから、里の外から森の精霊さんの笛の音が聞こえてきた。いつもありがとう精霊さん! 私たちの演奏を褒めてくれてるみたいで、聞こえると嬉しいんだ! 上手にできたんだ、って心の中で呟きながら、ヒメちゃんと一緒に「また明日もがんばろうね!」って言ったよ!
でも、そしたら、お師匠様とみんなが、怒る時の顔で、精霊さんの方を見てた。
チズの一人称でしたmm
ここまで読んでいただいてありがとうございます。ブックマークと☆のワンクリックが本当に励みになります! 楽しんで読んでいただけるように頑張りますのでどうぞよろしくお願いいたしますmm
※Xでキャラと遊んでいます。ぜひこちらもお立ち寄りください
@fujikoshinoryuu