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フジコシノリュウ -異世界一〇八人群像叙述詩-  作者: ノムラハヤ
1.藤野謙吾|友情、成長、死化粧 〜異世界六十夜冒険譚〜
21/54

ep.21|モリア家|明かされる陰陽五行の力4 ★キャラ画公開

「よかったなあケンゴ!」


 テオの明るい声が、張り詰めていた会議の空気をふっと和らげた。その声には、どこかほっとさせる、そして心の奥底で励まされるような、そんな温かさがある。



 ──それまで黙ってマザイの話を聞いていた当主アンティコスが、静かに目を開け話し始めた。


「ただ、この話は昨日今日降って湧いた話だ。まだ暫定対応の域を出ていない。早急に他3人の捜索を進めつつも、神皇様のご意見も賜り、最終的な意思決定と各国司への正式な通達をするまでに、もう少し時間がかかるだろう──そこで、だ。それまでの間で構わない。我がモリア領に、ケンゴ君の力を少し借してもらいたい」


挿絵(By みてみん)


 唐突な当主からの要請に、身をこわばらせる謙吾。冷静な当主の目の奥には、何か底知れぬものが潜んでいるような気がした。


「僕の……力ですか??」


「そうだ。先ほどマザイも触れていたが、現在皇国は魔族と紛争関係にある。我がモリア領も西のカカン海峡を挟み、魔族と緊張関係にある。そこで我々は──ここウェスト地方の()()()()()との連携を強化する必要がある」


 アンティコスは謙吾に振っていた視線をテオに向け直した。


「テオ、お前に仮の名代として、三国を周り、事前に同盟強化の話を通して来てもらいたいと思っている。公式訪問前の事前交渉だ。当然、非公式の訪問なので限られた人数で目立たずに行動したい。名目上は、モリア家の継承権の低い四男坊が各国を見聞し、友好を目的とした訪問を始めた、というところだな」


「三大貴族って当然、『鬼の里・ミナト家』、『狐の里・テイラー家』、『自由の国・ダオラ家』ですよね?」


「そうだ」


「そこに、ケンゴにも同行してもらって、旅の安全を担保しつつ、力の謎解きも担え、って感じですかね?」


 テオは父親の意図を正確に理解し、先にその意図を明かしてみせた。


「その通りだ。近年の魔獣の活性化により旅の安全を確保できる戦力は、多い方がよい。ただ、今回の周遊の性質上、ぞろぞろと大所帯で行くこともできない。巨大なジャクレインを一撃で葬るようなケンゴ君の力は、我々にとってはまさにうってつけ、ということだ。それに、不確定要素の強い旅路の中であれば、さらにその不思議な力の多様性も確認できるだろうしな」


「聞いたかい、ケンゴ? どうやらWIN-WINのプランを親父殿たちが考えてくれたようだよ。もう少し俺たちに付き合ってくれないか??」


 テオがにやりと笑い、謙吾へ視線を向ける。その笑顔には新しい冒険への期待と興奮が垣間見えた。


 ──仲間の所在を追い求め、自分の力の正体を解き明かす。そのために国と陰陽師連? が助力を買ってくれる。その代わり魔族との紛争に備える。その一環としてテオの外遊に同行する……。


 マザイとアンティコスの話は、謙吾の頭を混乱させるには十分すぎる情報量だった。その一つ一つが何を意味するのか、具体的な行動にどう結びつけるべきなのか、謙吾にはまだはっきりと見えていなかった。ただ、異世界の大人たちが描いたシナリオは、意外なほどシンプルに整理されている。まるで巨大なパズルのピースが一つ一つはまり込んでいくように。


「……僕はみんなに会いたい……そのためには、この国での役割を全うすること……」


 一人確かめるように呟く謙吾。マザイは、瞳に鋭い光を宿し、その決意を見定めるように見つめていた。アンティコスはその横で静かに頷く。


「ケンゴ君、仲間の所在は近い将来にきっとわかる。それは時間の問題だ。それよりも、それまでに()()()()()()()()()()も同じくらい重要なはずだ。何のためにこの世界に来て、君は何ができるのか? 何を為すべきなのか? 君がこれから見聞きすること、経験すること全てが、君の目を、力を目覚めさせ、皇国の運命の一部を担うための鍵となるのだろうと、私は思うよ」


 謙吾は深く息を吐いた。ほんの少し、身体は震えていた。


「あの高級宿でゆっくりするのもいいけど、俺と一緒にもうちょっと冒険の旅に出ても楽しいんじゃない? 答えはきっと、旅の中にあるさ!」

 いつものように緊張を和らげてくれるテオの声。


 謙吾にとって壮大に思えるこれからの道程が、ひどく単純なものに感じられた。核心だけ抜き取れば、いつだって答えはシンプルになるのだ。



「──わかりました。やってみたいと、思います」


 謙吾は決意を新たにし、力強く頷いた。心の中には新たな旅への期待と覚悟が満ちている。新しい冒険の扉が音を立てて開かれる、その瞬間がすぐそこに迫っているのを感じながら。


「ふむ、承諾感謝する。アバス、『()()()()()』、マラミ、前へ。今回の旅はテオとケンゴを含め、この5人で行ってもらう。()()()()()()()()()()()()()を巡り、現当主に挨拶を済ませ、近い将来必ず来る魔族との戦争に向けた協力関係を取り付けて来てくれ。テオ、非公式ではあるが、私の名代になるわけだ。しっかりと頼むぞ」


「はーい……って……カタリーナも同行するのか……」

 テオが不満そうに返事をする


「ケンゴ君、君の、いや、君たちの存在そのものが私たちにとっての希望と可能性なんだ。三国の周遊が終わる頃には、他の仲間の所在もつかめているだろう。期待しながら行ってきてくれ。数多の収穫と恩恵を掴み取り、無事に戻ってきてくれることを祈っている!」

 最後にマザイの言葉が強く背中を押す。



「わかりました。行かせてください!」


 謙吾は決意を胸に秘め、新たな冒険への扉をゆっくりと開けた。


 目の前に広がる未知の冒険には、数々の試練と出会いが待ち受けているのだろう。新たな使命と役割の輪郭が徐々に明らかになっていくのがわかる。わからないのならば、動けばいい。動かないのであれば、何も変わらないのだから。



Character File. 18

挿絵(By みてみん)


「どんなことでも始めたら半分は成し遂げたことになる」という言葉大好きです。謙吾君いってらっしゃい!


ここまで読んでいただいてありがとうございます。ブックマークと☆のワンクリックが本当に励みになります! 楽しんで読んでいただけるように頑張りますのでどうぞよろしくお願いいたしますmm


※Xでキャラと遊んでいます。ぜひこちらもお立ち寄りください

@fujikoshinoryuu

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