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追放アイドルは最強闘士をおとしたい  作者: 須藤 晴人


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控室の女たち

 莉愛がそそくさと控室に戻り、着替えを始めると、


「まさか空気読めない新人に掻きまわされるなんて! 女子王座本戦出場がパァじゃない!」


「しかも地味ナースもどきまでチョーシこいてうちらの邪魔してきちゃってさ! よりによってあいつまで本戦出場っしょ?」


「そ! 自分一人じゃ、ぜーんぜん弱っちいのにね!」


 などと先程の魔法少女らしき三人組が化粧を直しながら、聞こえよがしに喋る声が響いてきた。少し離れたところにいたナース風の魔法少女、はとりんは眉根を寄せつつも、三人に抗議するわけでもなく、ただ黙って身支度を急いでいる。問題を起こさぬよう聞き流し、早々に立ち去るつもりのようだ。莉愛も急いで服を着る。だがそれは、早く出ていくためではなかった。


「自分一人じゃ何にもできないのは、あんた達でしょ! 三人で連携して一人を潰そうなんて! そんな八百長じみたことしていいと思ってんの⁉」


 肩を怒らせて三人のところに向かい、胸を張ってきっぱり言い切った。予期せぬ莉愛の言葉に三人は一瞬面食らったものの、すぐに一人がプッと噴き出した。気の強そうなピンクの衣装のゆりあだ。彼女が三人の中心であるらしい。


「やだ、いきなり何怒ってるの? あはは、八百長? そんなバレたら即クビな事、するワケないじゃん! 新人さんは知らないかもだけど、バトルロイヤルで誰か弱い奴をターゲットにするなんてよくあることだよ? 勝負自体はガチで、あくまで試合の成り行き上、協力しているだけ。ってかさ、それだったらあんた達二人だってそうなんじゃないの?」


 彼女はくすくすと笑いながら、上目遣いに莉愛と、はとりんを睨む。言葉に詰まった莉愛と怯えた様子のはとりん、そして自信たっぷりのゆりあに他の二人も安心したのか、同じように笑い出した。


「あ、自分達がやってたから人を疑ってるんじゃなぁい? やだ、一緒にしないでって感じ」


「ってか証拠でもあんの? 言い掛かりとかマジでカンベンなんだけど」

 そんな三人の様子は、莉愛の怒りの火に油を注ぐだけだった。


「あたしは今日突然試合が決まったの! だからそんなことできるはずない! 勝てたのはそっちの連携も利用して、勝つために工夫したから! 言い掛かりは――」


「なんですの、騒々しい。邪魔ですわ。次の準備がありますの。着替えが終わったのなら速やかに退出して頂けませんこと?」


 ますます怒りを募らせる莉愛と逃げ出そうとするはとりん、そしてニヤニヤと笑う三人の間に、冷たく澄んだ声が響いた。その場にいた全員が一斉に声のした方を見る。

 そこには艶やかな長い黒髪をキュッと高い位置でひとまとめにした、凛とした、どこか人を寄せ付けない感じのするパワードスーツ姿の美人が立っていた。驚く五人に対して、驚くほど冷ややかな視線を注いでいる。


「あっ、すみま……ふん、確かにこんな奴の相手してる場合じゃなかったわね! 二人とも、行くよ!」


 その美人の凄みに当てられて反射的に謝罪しかけたゆりあだったが、さすがにそれは情けないと思ったのか、慌てて言葉を飲み込み悔し紛れの捨て台詞を残して去っていった。残りの二人も後を追う。


「あの、ありがとうご――」


「あなたも早く出て行って下さる?」


 礼を言おうとする莉愛に、美人はにべもなく言った。謙遜だとか照れ隠しだとかそんなのではなく、純粋に莉愛たちが邪魔だったようだ。莉愛はすみません、と頭を下げ、急いで外に出た。今時そんな話し方をする人など存在しないような、いわゆるお嬢様言葉を気にする余裕もなかった。

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