未来を賭けて #2
飛び掛かる莉愛に、メロディアは衝撃波を放ってきた。だが今までよりも大幅に運動性能の向上した莉愛にとっては、それを躱すなど容易かった。
「借りものの力で調子に乗らないで下さる?」
だが、敵もさるもの、メロディアは莉愛の攻撃をきっちり受け止めると、反撃とばかりに細身の剣を振るった。お互いに打ち合い、一進一退の攻防を続ける。
(やっぱり強い! でもこの前ほどじゃない。あたし、間違いなく強くなってる! これなら……いける!)
莉愛は刀を振り下ろし、次いで斬り上げる。一撃目は浅かったが、二撃目は綺麗に入った。メロディアのゲージが一気に減る。よろめくメロディアにさらに追撃を掛けようと莉愛は一歩踏み込む。
「うぅっ……!」
だが次の瞬間、強い衝撃が右脇腹に走ると同時に、莉愛の体は思い切り横に飛ばされた。
「殺戮機械M45! 貴方に助けられるなんて……!」
悔しそうに言いつつも、メロディアはどこか嬉しそうだった。莉愛が顔をあげると、鈍色のサイボーグが凄い速さで迫ってくるのが見えた。これはまずい、と莉愛は慌てて起き上がる。だが迎撃は間に合いそうになく、莉愛は体をこわばらせた。
M45が莉愛の直前でバックステップを踏む。莉愛と彼の間を金色の光が通り過ぎて行った。
「ルキ! ありがとう! ごめん、あたし……」
莉愛は態勢を整えつつ、自分を助けてくれたルキに礼と謝罪の言葉を掛ける。四人での戦いであって、タッグマッチではないのだが、自然とアキリアとルキ、M45とメロディア、というタッグが出来ていた。
「君は僕のパートナーなんだ、当然の事だよ。さあ、とっととこいつらをやっつけよう。僕達の舞台を作るために!」
ルキは軽くそういうと、またM45に向かって軽々と攻撃を繰り出す。ルキは接近戦では不利と見たのか、距離を取ることにしたようだ。遠距離の衝撃波を中心に攻撃する。M45はそれを躱し、距離を詰めようとする。そんな二人の攻防が続いていた。
(タッグみたいになってるけど、この試合、勝つのは一人だけ。ルキが目指す新しい舞台を作るためには、ルキに勝ってもらわなきゃいけない。だからあたしの役割は、ルキのサポート。なのに、ルキを危険に晒してばっかり。そんなんじゃダメだ。ちゃんと役割を果たさなきゃ。じゃないと、ルキに……。とにかく、あたしの役割を果たそう。今は、メロディアを倒す事!)
莉愛はこちらも距離を取ろうとするメロディアに投げナイフで応戦しつつ距離を詰め、必死に斬り掛かる。
「くっ……」
下がろうとするメロディアを莉愛は追い詰めた。メロディアのゲージも残りわずかだ。大技を撃たれないように、と莉愛は攻撃の手を休めず打ちかかるが、メロディアも負けじと応戦する。
「しまった……!」
つい力が入り、大振りになった莉愛の攻撃はメロディアにさっと躱された。態勢の崩れたところに思い切り斬撃を叩きこまれ、莉愛はふらりとよろめく。恐らく技を発動される、そう思い何とかダメージを減らそうと重い体を起こそうとしたが、
「喰らいなさい! アッコール・ディソナン‼」
メロディアが技名を叫ぶ方が早かった。莉愛は身構えるが、それは彼女には向けられていなかった。メロディアの視線の先を見れば、そこにはルキがいた。そして彼からパッと離れていくM45の姿が見えた。どうやら二人はルキを狙っていたらしかった。
「ルキ! 避けて‼」
莉愛は慌てて叫ぶと、もう遅いとは知りつつもメロディアに飛び掛かる。だがやはり時すでに遅く、メロディアの放った銀色の鋭い衝撃波は一直線にルキに向かって飛んでいく。
「くっ……! 悔しいけれど、後は頼みましたわ……」
とはいえ莉愛の攻撃も大技を繰り出した直後のメロディアには避けようもなく、彼女のゲージをゼロにした。メロディアの体が崩れ落ち、そして光の粒になって消えていった。
「あんな攻撃に、僕がやられると思ったのかい? さあ、後は殺戮機械M45を倒せば僕たちの勝利は確定だ」
直撃ではないとはいえゲージを減らしたルキは、それでもニヤリと余裕の笑みを浮かべる。その余裕の笑みを消そうとしたのか、単に隙と見做したのか、M45が凄い速さでルキに襲い掛かる。
「させない!」
そこへ莉愛が割って入り、M45の攻撃を止めた。そして彼女はぐっと刀に力を込めて彼を押し返すと、その勢いで攻撃に転じた。
だが殺戮機械M45は余裕の表情で莉愛の攻撃をあっさり避けると、反撃を繰り出す。接近戦で自分に挑むなど愚かなことだ、とでもいうかのようだった。
「接近戦が得意なのはあんただけじゃない! あたしだって日々特訓してるの! あんたは、あたしが倒す!」
辛うじて反撃を防いだ莉愛は再び攻撃に転ずる。防げたのは運が良かっただけだが、それでも莉愛は強気な姿勢を崩さなかった。
一瞬だけ、莉愛の後ろにいるルキの方に視線を外したM45の隙を突き、彼に飛びかかる莉愛だったが、
「あ、ぐっ……!」
あっさり気付かれ、カウンター気味にM45の蹴りをまともにくらう。そんな二人の攻防の最中、ルキは不敵な笑みを浮かべていた。
「ふふふ……ありがとうアキリア、君にしちゃ上出来だ。おかげであいつを倒せるよ。これで終わりだ! ゴールデンクロス!」
幸か不幸かM45の蹴りで飛ばされた莉愛は、ルキが二人に向けて飛ばした大きな金色の十字架の直撃は受けなかった。
 




