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追放アイドルは最強闘士をおとしたい  作者: 須藤 晴人


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女子王座決勝戦 #1

 決意に違わず莉愛は更に勝ち進んだ。今日の準決勝も彼女の大勝だった。試合を終え、ラウンジで一息つく莉愛の所へ、飛鳥が近づいてきた。


「莉愛ちゃん、スゴイね! いつの間にか、めちゃくちゃ強くなっちゃって! クラスもBに上がってるし! いよいよ決勝じゃん! もうわたしじゃ敵わないなあ」


「飛鳥! 見ててくれたんだ。ありがとう。うん、何とか勝てたよ。飛鳥は……準々決勝残念だったね。でも相手、すごく強かったもんねえ……。で、その飛鳥の相手だったレディ・タイガーが次の決勝戦の相手か……」


 莉愛はトーナメント表を見て、顔をしかめる。


「ま、順当だよね。女子の中ではメロディアに次いで高い、Aクラスの闘士だもん。男子にも結構勝ってるし、前回のトーナメントでは決勝でメロディアに負けたけど、かなりいい勝負してたみたいだし」


「あ、メロディア、前回は出てたんだ。でも……メロディアといい勝負だったってことは、やっぱり相当強い、って事だよね。よーし、頑張るぞ! 練習あるのみ!」


「そうそう、その意気だよ! レディ・タイガーは莉愛ちゃんと一緒で接近戦主体なんだけど、武器はハルバードだから中距離かな。結構リーチが長いから、気を付けて。あと攻撃力の高いパワー系。でも小回りは利きにくいから、莉愛ちゃんなら懐に入りこめれば勝機はあるんじゃないかなあ?」


 飛鳥がレディ・タイガーの過去の試合の動画を見せながら言った。


「あ……! 莉愛ちゃんて、今まで遠距離武器以外の相手と戦ったことあったっけ?」


「そういえばないけど……なんで?」


「スーツのお陰でダメージは大分軽減されるんだけど、それでも遠距離攻撃の疑似的なダメージとは違って結構衝撃があるんだよね。要するに痛いの。それと直接攻撃って武器で受け止めても、相手の力が強いと当然押し込まれるし。遠距離相手に慣れちゃってると、戸惑うかも。レディ・タイガーは特に攻撃が重いから、気を付けて」


「そういえば、ルゥ……この間の対戦相手がそんなことを言ってたっけ」


「実際近距離攻撃受けてみるといいと思うんだけど、私じゃ相手にならないし……ごめんね」


「ううん、気にしないで。そういうの事前に知っておけて良かったよ。ありがとう!」


 莉愛はにっこり笑って飛鳥に礼を言った。



 いよいよ女子王座の決勝戦、莉愛は詰めかけた観客に愛想よく笑顔を振りまき、声援に上機嫌で大きく手を振って応える。その莉愛の目が、ボックス席の一組の男女の前で止まった。彼女の眉間にしわがみるみる寄っていく。


(やっと見に来て見に来てくれたと思ったら、メロディアと一緒⁉ しかもまたキレイめな格好で、ちょっといい席! どういうつもり!)


 ボックス席の二人は何やら親し気に談笑している。莉愛はアイドルにあるまじき形相でそんな二人を睨みつけた。メロディアと目が合う。彼女が勝ち誇ったような笑みを浮かべた気がした。


「よそ見なんて余裕だねえ!」


 女性にしては低く太い声が響いた。嘲りを含んだその声に、莉愛ははっと息をのみ、声のした方に目を向ける。

 動物の頭蓋骨で作った兜に、胸部から腰部を覆う鎧、籠手とロングブーツを身に着け、虎の毛皮でできたマントをはためかせる大柄な女性が莉愛を嘲るように見下ろしていた。


「まさかアンタみたいなアイドル崩れが決勝まで勝ち上がってくるなんてね! よっぽどトーナメントの引きがよかったのかねえ。でもそれももう関係ないよ! ここでアタシが終わりにしてやるからねえ!」


 女性とは思えないほど太く逞しい腕でハルバードを持ち、その柄をがっちりとした肩にトントンと打ち付けながら、彼女はずん、と莉愛に向けて一歩踏み出す。

 飛鳥の言った通り、見るからにパワー系の闘士だ。むしろ男性闘士でも、ここまで筋骨隆々のタイプはいないだろう。ある意味で最も闘士らしい、と言えるかもしれない。いずれにせよ、集中を欠いた状態で勝てるような相手では無いことは明白だった。


「運も実力のうちでしょ。それと、アイドル崩れじゃなくて現役アイドル! 強くて、かわいい、闘技場のアイドル! ちゃんと覚えてよね!」


 莉愛は一歩も引かず、背の高いレディ・タイガーを見上げて負けじと言い返す。


「ハン、自分でかわいいなんて言ってりゃ世話ないねえ! 強くてかわいいだって? どっちも中途半端なのがオチさ!」


「自分がかわいいと思ってないのに、人にかわいいと思われたいなんておかしいでしょ? だからいいの。大体、強さとかわいさが両立できないなんて誰が決めたの? あたしはどっちも諦めない! あなたに勝って、それを証明してやるんだから!」


 莉愛はびしっと対戦相手のレディ・タイガーを指差し、高らかに宣言した。それを聞いたレディ・タイガーの額に浮かんだ青筋が、彼女の威圧的な顔を更に恐ろしく変えていく。


「レディ・タイガー対アキリア、試合開始!」


 会場に響き渡る試合開始の音声と共に、莉愛はレディ・タイガーに向かって走る。

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