7.錬磨
〜前回のあらすじ〜
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龍と分離したよ。
龍の話では、目的があってこの異世界に転生したらしく、僕の肉体や霊力が龍にも関係があるらしい。
詳細はまだ聞いてないが、とりあえず分離できたことで展開は順調とのことだ。
相変わらず特訓は継続なんだな、まだまだ僕の能力は、彼が求めるだけの必要分足りていないらしい。
それから二週間が経った。ある程度マシになってきたようで、一秒とかからず変身できるし、解除も可能になった。
ジャンプも空を飛ぶことも快適だ。ここで新たなミッションが追加される。
「お主、次のステージに行くぞ」
はい来ました次の展開、難易度上昇ですーぅ。
「なんだその不貞腐れたネズミみたいな顔は」
なんだよその例え、僕いまそんな顔なの。まぁどっちでもいいけどさ。
「話を戻す。お主にはこれからエネルギーを練り上げる訓練をしてもらう」
エネルギーを練り上げる? 凝縮させるということなのか?
「イメージとしてはそんなところだ。一時的に凝縮させ錬磨させる、その後に変換することもやれると尚良い」
変換ねぇ、変換アダプタをエネルギー版でやるということか。てか何でそんなことやらなきゃいけないんだろう……。
「実はな、頼まれておるのだ。お主の霊力を鍛える意味もある。時期が来たら意味がわかるはずだ」
とりあえずやるしかなさそうだからやるか、暇だし。だってこの世界、ゲームとかなくて退屈だし、異世界ファンタジー物だと思ってやってみよう。
やり方としては、まず掌でエネルギーを放出する。次に掌でエネルギー球をイメージする。
その球を圧縮させ質が良くなるまでブラッシュアップする感じだ。何をいっているのか自分でもよくわからないが、とりあえずこの流れで大方できているようだ。
龍も頷きながら見守っているため、間違ってはいないのだろう、続けてみる。
……。
これがなかなか疲れる。10分と持たない。意図的にエネルギーを扱うことはこんなに摩耗するんだな。
全身の激しい倦怠感に襲われ膝をつく。その時、上空から僕を見下ろす人型の影のようなものが見え、空を見上げたが、何もいなかった。龍に聞いてみる。
「あのさ、いま空に何かいなかった?」
「何かとは?」
「なんか生き物というか、人みたいな輪郭をした何かが上から僕らを見ていた気がするんだ」
「気のせいではないのか、我は何も感じなかったぞ」
実はこの時、龍は気づいていながら気づかないフリをしていたらしい。僕に気づかれないように、人型の影とテレパシーでやり取りを重ねていたと、後から聞いた。
特訓は続く。バテるまで己を鍛え、疲れ果てたら龍がエネルギーを僕に付与し少しだけ回復させてくれる。
なぜ少しかというと、少しのエネルギーを上手く体内で培養増幅させ、活用することも必要だからということだ。
一円玉を1000円にする、みたいなイメージ。ほんと、この世界ではこんなこともできるのかと不思議であり、面白くもある。
エネルギーの扱いに慣れてくると、体はエネルギーの影響を受けているとわかってくる。体が動く前にエネルギーが動いているのだ。
物質としての肉体はエネルギーの後に磁石のように引っ張られて動いたという事象に過ぎない、受動的な反応を示すことに気づく。
さらに、エネルギーで体を意図的に操作しやすくなるほど、疲労感も少なくなってきた。筋肉だけで体を支えるよりも遥かに効率が良い。便利な能力だ。
とりあえず凝縮と錬磨まではなんとかなった。問題は変換だ。変換って何か別の目的のために変化させるって意味だろうし、何に変換するか考えないとやりようがない。
「我の体を作ってみろ」
ん? どういうこと。
「我の体のサイズや見た目に合わせて、物質化してみろ、ということだ」
なるほどね、ある意味変換なのか。物は試し、やってみる。
これが思ったより簡単だった、特訓の成果だろうか。数秒でできてしまって、なんだか呆気ない。
人は努力した実感がなければ、幸せを感じないのだろうか。いや違う。
子どもの頃はただただ楽しかったはずだ、大人になるにつれ、感受性が麻痺しているんだ、きっと前頭葉のせいだ、そうしよう。
自問自答は置いといて、姿としては完成させられた。これには龍も驚く。
「うむ、初めてにしては出来がいいな。さすが我が見込んだだけはある」
いつ見込まれたのか知らないが、ここは聞かないでおこう。
にしてもこんな技術何に使うんだ? 街の建築物が壊れた時に作るとか? もっと技術が高まれば内臓を修復するとか?
いや、そもそもこの世界、病気の概念と縁薄そうだしな……。
あれこれ考えてながら俯いていると、また人型の影が視界に入る。慌てて上を見ると、それはいた。
明らかに人型、だが人間というにはひとまわりほど大きく、なんかオーラ強っ! なんなのあの金色のオーラ、某バトルアニメじゃんかよ、何、侵略されるのこの異世界。
だがそうでもなく。蓋を開けてみれば、とても平和であった。
龍は当たり前にこの事態を受け入れ、僕にこの人物を、正確には宇宙人を紹介してくれた。僕にエネルギー変換の特訓をさせたのは、この宇宙人のためらしい。
実際の宇宙人の一部を書いていきます。
ふふふ。