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6.分離

〜前回のあらすじ〜

龍と一体化して、空を飛んだの巻。

 ということで、ハンバーグを食べることにした。


 幸い、この世界にもハンバーグはあり、というか大体は日本にある食事と同じようなラインナップのようだ、お寿司もあれば某チキンもある。


 カレーもラーメンもある、うん、食事には飽きなさそうで幸せだ。


 今回の食事は捗る捗る。たっぷりのデミグラスソースがかかった、ふわふわ肉汁ジューシーなハンバーグ、口の中がとろけそうになる。ご飯もおかわりしながら、どんどん掻き込んでいく。


 食べることでドーパミンやセロトニンも出ているのか、気分が良い。喉がやたらとグルグル鳴っているのはきっと気のせいだ。


 猫がリラックス時にゴロゴロ鳴るような音なんだよな。気のせい気のせい。龍の疲労回復のためにも、今は多めに食べておこう。


 ……。

 これでもかと平らげた。お腹パンパンで動きたくない、頬も緩む、心地良い。だが安心してはいられなかった。


「お主、休んではいられんぞ。特訓だ」

「特訓?」


 何のことだ、何の特訓なんだ?


「さっきも言ったであろう、お主は前世でもろくに霊力を使ってきておらん、それでは我の力の使いようにも限度が出てくる。鍛えねばならん」


 まじかよ。あんなに食べたんだぞ。てか、今回は眠らないんだな龍さん。


 さて、特訓は初歩的かつ単純であった。意図的に何度も龍化し解除することを繰り返すだけ。さっきは龍自体が僕の体を操作したが、やはり自分でできるようにさせる方針らしい。


 シンプルゆえにすぐ飽きる。何度も何度も龍になるイメージをしては、元の人間に戻るイメージの繰り返す。


 未だかつて、僕はここまでイメトレを続けたことはあっただろうか。とても頭が疲れる。


 だからといって休むこともできない。休もうとすれば喉にいる龍が悪さをするからだ。


 悪さは何だって? 簡単さ、痒くて痒くてたまらないお仕置きが待っているのだよ。


 そんな事態は苦痛すぎるため、ヘトヘトになりながらも特訓は続く。


 ……。

 100回は超えただろうか。特訓を続けてきて、体感に変化が生じた。龍化することに時間と精神力をあまり要さなくなってきたのだ。


 当然、戻ることもスムーズだ。初めは20秒くらいかかっていたのに、今は3秒ほど。こんなに早く効果が出るものなのか、テレパシーも日常会話のようにできるまで成長した。


「だいぶスムーズになってきたな。このまま毎日100回は特訓を続けるぞ」


 まじか。100回って聞くとうんざりしなくもないが、まぁ慣れてきたし、今日ほどは疲れないだろう、いいか。


 翌日、うん、今日も良い天気だ。天気変わらんからな、毎日清々しいもんだ。日付感覚はなくなるが、まぁいいだろう。今日も100回特訓をする。


 そこまで疲れない。普通に歩いているのと、さほど変わらない疲労感だ。バスケのドリブル練習みたいで面白くなっている。


「では追加だ。ジャンプと空を飛ぶ、これもメニューに入れよう」

 あいよ。


 龍化後、ジャンプする。今度は10m以上飛んでしまった。龍化に慣れてきたからか、本来のポテンシャルが現れ始めている。


 空を飛ぶことも、自在に方向転換できるし、スピードも何倍にもなっている。これは便利だ。


 こんなふうに、トレーニング効果をわかりやすく体感できたら、モチベーションも上がるなぁ。


 あっけなく、叶えたかったことの1つが叶った。嬉しいんだが、台風のように過ぎていった出来事で、幸せを噛み締めていなかったように思う。


 でもどうだろう、夢中になっている時って、そんなことも考えてないのだから、これはこれでいいのかもしれない。


 だがせめて、余韻にだけは浸っていたい。こんな経験、元の世界ではあり得ないんだから。


 ゆっくりと深呼吸する。今ここに生きていることを、これでもかと感じてみる。するとお腹が空いてきた。


「今日はこんなもんでいいだろう。これからは毎日、今日の特訓を続けるぞ」


 はい、龍さんからのお題が出ましたね。まぁ地道にやりましょ、良い想いさせてもらってるし。

 

 そんな習慣が一週間と続いた後、それは起きた。


 ポンッと音が鳴り、体が前後へ波打つように大きく揺れた。


 揺れが治ると体が軽くなっていて、何かが消えたことはわかる。


 後ろから気配がする、足元には巨大な影、何か生き物がいるのは間違いない。そう、喉にいた龍が飛び出したようだ。


 身長は165cm程か、龍の如く鱗万歳のゴツゴツボディ。顔に尻尾と爪が明らかに人間ではないことを強調している。


 特に爪なんて大きいフォークより長いぞ、折れないか心配になるくらいだ。


「やっと出れたわい」


 まるで着ぐるみから出てきたバイト上がりのおじさんみたいだな、うん、これだ。


 テレパシーで何度も耳にした声、はいあなた龍ですねさっきまで喉元にいた。何この人、勝手に飛び出したんだけど……!


「我は元々この姿になることが必要だったのだ。お主が霊力を鍛えるまでは、なぜか強制的に喉に滞在させられてな、退屈で仕方がなかったぞ」


 まぁ毎日単純な特訓しかしてないし、代わり映えもないからな。暇で仕方ないのはわからんでもない。

龍が物理化して対話できる世界に行ってみたいと思う今です。

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