10.新たな龍
店を出て3人で散歩していると、突然に僕らがいる場所から5m程離れた場所に、時空の歪みが生じた。
今となってはエネルギーによる現象が目で見えてしまう、プレちゃんのおかげだろう。
漆黒の渦が半径1m程の大きさで発生しており、何かが出てくる予感がする。なんだなんだ、こんなことなかったぞ。
すると急に、渦の色が虹色になりパンッと弾けた。渦があった場所はただの空間になり、その下には小さな小さな生き物がいた。
身長で現すなら30cmくらい、プリズムのようにキレイな龍だった。
小さな龍は目を開くなり、メギドに抱きつく。「おじちゃーん!」と泣きついている。
メギドは狼狽えることなく、ヨシヨシしている。どうやら知り合いらしい。
「いやぁすまんね急に。龍界でよく我に懐いていた虹の龍だ、クリちゃんと呼んでやってくれ」
目がクリクリしてるから、そのニックネームとのこと。とってもよく懐いていて、まるでお姉ちゃん大好きな妹みたいだ。
「おじちゃーん、おじちゃーん」
泣いてばかりいる、困ったことがあったのだろう。メギドが訪ねる。
「どうした? 何があった?」
「あのね、あのね、グス、、おじちゃん急にいなくなって寂しかったの」
メギドは異世界に行くことをクリちゃんに話してなかった。龍界ではずっと懐かれていたものだから、急にメギドがいなくなって、悲しくてたまらなかったらしい。
「ずーっと探したんだよ。いろんなところにいったの。でもね、おじちゃんどこにもいなかったの」
「すまんのぉ、一言いっておけば良かった」
本当はメギドは言うつもりはなかったのだ。泣きじゃくってついてくるのが目に見えてたから。
しかし、いくらメギドとはいえ異世界に行くのに、まだ小さな子を連れていくわけにはいかなかった。
異世界と龍界、行ってみなければ細かな事情がわからない、危険を伴う可能性もある、あえていわなかったのだ。
「朝起きたらね、おじちゃんどこにもいなかった。お布団にも窓の外にも、家を出てどこに行ってもいない」
「……。」メギドは言葉に詰まっている。
「でも、やっと見つけたの」
曇りのない無邪気な笑顔を見て、メギドは反省した。
「すまんのぉ、本当にすまん」
しかし、どうやってこちらの世界にきたのか。転生でもしない限り、別世界に行くとなると、ワープゲートを作るか宇宙船みたいなもので移動するしかないらしい。
先ほど見た渦は、おそらくワープゲートなんだが。
「それにしてもどうやってここに来れたのだ? あんなゲート、自分で作れんだろ?」
メギド曰く、まだ小さな龍にあんなことは普通はできないらしい。他の龍が手助けしたとも思えない、なぜなら渦の形が歪だったからだ、と。本来はもっとキレイな丸型の渦になるんだと。
「うーん、なんか気づいたらここにいたよ!」
本人もなぜこうなったのか原因がわからない。なんなのか理解できない。
ひとまず今日は皆でゆっくり過ごして、また日を改めて考えることにした。
ところが。
その晩、メギドとクリちゃんは同じ布団で寝ていた。メギドはふと目が覚めてしまい、部屋を出て屋根の上で星空を眺めていた。
キレイな星がたくさん、いくつかは訪れたこともある星もある。感傷に浸っていた時。
「おじちゃん? おじちゃんいない。うわーん!!!」
その瞬間、昼間に見たワープゲートが出現、同じようにクリちゃんがゲートから出てきた。
本人も驚いていて、何が何だかという様子。
メギドは理解する。クリちゃんが泣いたことで、エネルギーが爆発的に出力され、自ら移動できる空間を作ってしまったんだ。
なぜ自分のところに来たか、考えられることは2つ。
1つ目は強い想念で移動先を指定できた可能性。2つ目は龍界にいる誰かが移動先を遠隔で指定した可能性だ。
1つ目に関しては、不可能ではないが不可能に近い。なぜなら、想念で移動先を指定できることは誰にでもできる。
問題なのは、はっきりこんなに近距離を指定するためには、かなり強い想念が求められ、意識を集中させるトレーニングをしなければまずできない。
そのため予想としては2つ目、龍界の何者かによる差配だ。
これに関しては、龍界にアクセスし確認すれば済む。
すぐにメギドの側近に確認するが、まったく事情を知らされていないらしく、当てが外れた。
この件に関しては、答えを探さなければならない。ワープゲートの行先を指定ミスした場合、とんでもない危険区域にクリちゃんが行く可能性があるからだ。
メギドもかなりの実力者とはいえ、行けるエリアには限界がある。そうなると、メギドでも探しきれない区域に行かせるわけにはいかない。
しかし、考えても答えが出ない。それにもう少し寝なければ次の日の体力も持たない。
楓の教育係としても、自分の体調管理ができないようでは、示しがつかない。問題の件は保留にして、クリちゃんから離れないことを優先に、もう一眠りした。
龍も多様に存在しております。




