第11話
「いやぁ、いろいろあったねぇ……」
隣にいる達輝にしみじみと話し掛ける。
あれから百合園さんは言った通りに元々いた地方支部に再度転校していった。
離れ離れになることで私も彼女もまた『半端者』に戻るはずだったが、なぜか二人で一緒に出していた時と同じように一人でも魔法を出せるようになった。性質も光のまま。あの屋上での出来事の後から使えるようになったので、前世の記憶が押し込められていたところに魔力も埋まっていたと思われる。これもきっと、百合園さん――ミアと一緒に転生ゲートを通った影響だろう。
「そう、だな……」
「ん? どうかした?」
どこか引っ掛かる返事をした達輝に違和感を覚え彼を見ると、何か落ち着きがない様子だった。いろいろあったし、まだ頭の整理がしきれていないのかもしれない。最初に前世を思い出したのは達輝なのに。
「あー……あのさ、俺、ちゃんと言ってなかったな、と思って……」
「なにが?」
「……前世――エステラさんのことは、憧れなのか別の感情なのか、いまいち判断できなくて、でも尊敬は根底にあって。……なんというか、こうやって軽々しく会話してるの自体恐れ多いというか……」
いきなりなんの話かと思ったら、そういえば屋上でもそんなことを言っていたっけ。まさか同級生、しかも幼馴染から、恐れ多いなんて言葉が出てくると思わなくて、つい表情を緩める。
「はは! 私、そんなに神だったの?」
「俺の、ルイスの中では、そうだったよ」
「その信奉者が死の一因になったけどね」
「……それを言われると、返す言葉もない……」
「ごめんごめん、知らなかったんだからしかたないよね」
茶化し気味に言ったら思ったよりも重く受け止めてしまったので、はは、と笑いながら彼の肩をバンバンと叩く。
達輝が悪くないことなんて百も承知だ。黙ってしまったので本気にしたかと少し心配したが、こちらに向き直りひとつ深呼吸をして言葉を続けた。
「……でも、前世の記憶を思い出すまでの間、礼香と過ごしてきた日々は紛れもなく飯島達輝としての人生で」
「そうだね」
「お前に、一緒にいたら安心するって言われた時、俺も同じようなこと思ってた。……俺の隣には、礼香がいてほしい、これからもずっと」
私の目をしっかりと見つめながら真剣な顔で達輝はそう言った。
私だけじゃなくて、隣にいてくれた達輝もそうやって思っていてくれたんだ。無理して傍にいたわけではないことが知れて、ホッとすると同時に嬉しくなる。
……ん? 今、ずっと隣にいてほしいって……。それってつまり――。
「……はは!」
「っ! 俺、変なこと言ったか?!」
「いや、ごめん。まさかプロポーズされるとは思ってなかったから」
「え、――」
自分が口にした言葉に気が付いた達輝が慌てふためく。そんなつもりはなかった、とでも言いたげである。今さら、前言撤回なんてしてもらっては困る。
「なに、嘘ってこと? 私の隣にいてくれないの?」
「いや、違っ! ……傍にいたいし、いてほしい。けど、プ、プロポーズとまでは……」
顔をほんのりと赤らめながら困ったような表情で頭をぽりぽりとかく。
私が意地の悪いことを言って申し訳なさそうにするのは何度も見たが、こんなに照れている達輝を見るのは初めてだ。しかも、それが私に対してだなんて。
「これからもずっと、かぁ。前世のことがあるから、先に裏切られそうだね」
「そんなこと、絶対にしない。今世こそ、幸せにする」
再度、私の目を見据えながら言う達輝にどきりとする。その真剣な表情に、なのか、彼の想いを告げられたことに、なのか、分からないけれど、気恥ずかしくなり夕日が差す帰り道へと走り出す。彼の方を向かず、前だけを見て聞こえるくらいの声量で返事をする。
「……うん、ありがとう! いいよ、付き合おっか!」
頬が熱く感じる気がするけど、その理由に知らないふりをした。
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いろいろなしがらみから抜け出したくて、自由になりたくて飛び込んだ先で待ち受けていたのは、100%の幸せではなかったけど、少なくとも利用されて殺されることになった前世よりは幸せになれた、と思う。いや、これから彼と一緒に、エステラ・ガルシアの分まで幸せになっていくのだ。
……もう百合園さんと会うことはないだろうけど、初めて魔法が出せた日も練習したあの日々も、百合園さんのことも、忘れることはきっとない。
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