同郷の人のお風呂を借りました
「お風呂…!!!!」
イトーの言葉にディアリアは目を輝かせた。ハヤトは言葉に出ないまでもお風呂の言葉に隠しようもなく嬉しさを滲ませている。
それもそうだった。その世界に転移してからかれこれ一ヶ月。それまで2人は水浴びさえできなかったのだ。唯一できたのは水を含ませることができる繊維植物を見つけて水を含ませて躰を拭くことくらいだった。
「タオルとかは用意しておくから行っておいでー場所はこの道の突き当り、のれんがかかってるところね」
「はーい!ハヤト私先に入るね!!」
「おう、いいぜー」
「あっ、仕切られてるから、二人一緒に入れるよ」
「のれんがある時点で思ってたけど宿泊施設か何かなの!?でもありがたいです!行ってきます!」
「驚きで敬語抜けててくさ。うん、ごゆっくり~」
「「ありがとーございます!」」
お礼を述べながらも、二人はダッシュで浴室へと駆けたのだった。
「「あっ………たかぁぁぁぁい…」」
体を洗って、一人で入るには広い浴槽に浸かると思わず声が漏れる。
そして、思わず出た言葉が同じで、更にタイミングも同じく2人の声が響き渡った。お互いの声が聞こえた二人は思わず笑いだす。お湯に浸かってどこか緊張していた部分がほぐれたのか、一頻り2人の笑い声が響く。
「ふへへっ、そっか、気づかなかったけど、ここって声が聞こえるんだね」
「ふっくく…あーめっちゃ笑った。みたいだな。」
チャポンとお湯をかける音が響く。
絶えずお湯が流れる音が心地よさを加速させる。
そうしてティアリアはしみじみとした声を発した。
「いい人に会えて良かったなぁ…」
「ティアダメだろ、まだ一緒にいて短いんだから、警戒心は持っておかないと」
「えー、でも私たちをここに送ってくれた神様のことを話してたんだよ?警戒しなくてもいいんじゃない?」
「んー、まあそれは一理ある。あるけどこれから出会う人はそうじゃない。だから疑う心をいつも持たないとだろ」
「あーね、そうだよね。これからのことも考えなくっちゃなんだっけ」
「そうだ。何をするのか、どうやって生きていけはいいのか、イトーさんにいろいろ聞いてみようぜ」
「そうだねっ!………っと、じゃあもう上がろっか」
「だな、イトーさん、オレ達を待ってくれてるだろうし」
そう言って2人はざばっと浴槽から出るとシャワーを浴びて脱衣所へと移動した。
「おかえりー、疲れは取れた?」
「はい!ありがとうございますっ、めっちゃ気持ちよかったです!」
「お風呂貸して貰ってありがとうございます」
ペコリと礼をしながら感謝の言葉を次々伝える2人にイトーはいいよーとにっこり笑顔を浮かべた。
「これからしばらくここが君たちの家になるんだから遠慮なんてしなくていいんだよ」
そのの言葉にえっ!と目を伏せていた2人が目をキラキラさせてイトーを見た。
「うん、あのクソ神にも頼まれてるからね。2人がこの世界に慣れるまで、ボクが暫く面倒をみるよ!」
「い、いいんですか!?」
「そうですよ!ご飯とかもそうですけど私たちお金も持ってないです!なので何も支払えないです…」
「んんんーボクとしてはお金貰うつもりはないんだけどなぁ…、まぁそういうところは追々決めていこうね」
その言葉に2人はやったーと両手を打ち鳴らしたのだった。
建物の構造を考えるのめっちゃ楽しかった…です…
秘密基地って憧れますよね…
小学生の頃机の下が私の秘密基地でした