同郷の人の家に招待されました
かけました!やったー!
イトーの案内に従って歩く2人。
「2人がいたところは埓外の森。通称常識ハズレって言われている場所なんだ。あそこ、ここと比べてもおかしい形をした木とか草とかたくさんあったでしょ?」
「えっ、じゃああそこにあったものがこの世界の普通じゃあないんですか?」
「そうだよー。一応植物や食べ物は僕たちのいた地球とほぼほぼおんなじ。味とかはやっぱり地球のほうがダンチで上だけどね」
「良かったぁー…あんな初見殺しの食べ物がゴロゴロしてんのかってビクビクしてたよぉ…」
「……えっ、まさかあの場所のきのみとか食べたの?あの見た目でかつ猛毒あるのも混ざってるのに?」
イトーがはわわ…と声を上げて明らかに引いていた。
確かにティアの鑑定がなかったら何を食べてもいいのかわからず俺達は餓死してたか我慢ならなくなって適当に食べちゃって毒にあたって中毒死してたと思う…
そんな話をしているうちに、埓外の森の木々が地平に隠れて、そこからも更に歩いていると、次第に建物が姿を現し始めた。どうやらイトーの住む街に近づいているようだ。
しかし、イトーの歩みは街へと続く道から逸れて横にある森へと進んでいた。
「えっ、あっちの街じゃないの?」
「はい、僕が住むにはちょっと肩身が狭かったんです」
その内容と口調にハヤトとティアリアは不思議そうな表情を浮かべて顔を見合わせた。
イトーは森の中へとズンズン歩いていく。慣れ親しんだ人間の歩き方だった。
開拓され整理された道をしばらく進んで、途中で道から逸れて明らかな獣道へと歩みを進める。
目の前に飛び込んでくる木々の枝や、蔦やら草やらを振り払って進んだ先に現れたのは小さな湖だった。
何処かから水が流れているのだろう、川のせせらぎや滝があるのだろうか水の落ちる音も微かに聞こえてくる。
少し開けたその場所の辺にぽつんと一軒家が立っていた。
「ふぅ…やっとついたぁ…二人ともここが僕のマイホームだよ!」
そう言いながら家の前に立つと扉を開けて二人を中に招き入れた。
「…?あれ?やっぱり小さいよね…?」
「オレ達、ここで一緒に住んでも大丈夫なんですか?」
二人がそんな反応を示すのもしょうがなかった。なぜなら明らかに三人で暮らせるような広さじゃなかったからだ。
平屋の一戸建て、扉から入ればすぐに食卓であろうテーブルと椅子が2脚。この時点で三人は定員オーバー。更に別部屋もなくベッドがあり、台所がある。どう考えても地球で言う一人暮らしワンルームの大きさでしかないのだ。
「ふっふっふー。これがだいじょーぶなんだなぁ!」
そう言いながらトイレであろう部屋の扉を開ける。
扉の先はやばいというべきかトイレだった。
「ふ、風呂なし……!」
そんなティアリアの絶望的な声はそのままに扉を閉めてもう一度開けようとするイトー。
「さっきあけましたよね…?まさか忘れちゃったんですか……?」
「んなわけないでしょ!!…まぁみてて!」
そして先ほどとほぼ同じように扉を開ける…が、その先に広がる景色はトイレではなかった。
「えっ!?トイレがなくなってる!?」
そう、トイレではなくただの白い空間が広がっていた。
「…なんか広さが地球のエレベーターみたいですね」
「えっ!?良く解ったね!?そうだよ!!」
「えっ…??」
驚きの声をあげるイトーにハヤトも意味がわからないと声をあげる。
「ま、ま、まさか、ホントにエレベーターなんですか!?えっでもどこにいくんです!?」
イトーはニッコリと笑って下を指さした。
「地下!?」
「そそ、んじゃ見たほうが早いからとっとと進んで進んで!」
箱に入ってボタンがあるはずの場所に手を押し当てると、小さな浮遊感とともに部屋は動き出した。
「元々のトイレは大丈夫なんですか?」
「うん。ヘーキ。エレベーターが行ったあとはもとに戻るんだ。あの家自体も頑丈だからね☆」
2人があの小さな小屋が頑丈(笑)くらいのレベルでとんでもなく強化がされており更に防犯上でもとんでもない強化がされていることを知るのは少しあとになるのだった。
「さてとーちゃっく!お待たせ!ここがボクのホントのマイホーム!部屋は後で案内するから先ずはお風呂に入ろっか!」