異世界転移 その2
「その世界はね、魔法が主流の世界で人々は魔物を倒したり、農業をしたり、魔導具を作ったりして所謂一次産業で発展してるんだ」
話を聞いた限りだと平和そのものの世界だ。
だとしたら、
(なんで私達が行かなきゃならないの…?)
私と同じことを思っているのだろう。彼も不審そうな顔をしていた。
そんな思いを汲み取ったのかリタクが難しそうな顔をしながら話しだした。
「うん、やっぱり気になるよねぇ…。君たちが行かなきゃいけない理由。…うーん、なんだけれど伝えたくないんだよね。伝えちゃうとソレに縛られちゃうじゃん?」
むむむ…と唸りながら俯いて考えていたリタクはやっぱりダメと呟くと、二人に顔を向けた。
「ごめんね、考えたけどやっぱり理由は話さないや。覚えていてほしいのは君たちが君たちの思うようにその世界を生きてほしい。ってこと」
そうだね、とニコと笑って
「ボクが君たちを送る理由がわかるその時まで、終わってしまった生のボーナスステージだとでも考えてほしいな」
と言葉を続けた。
怪しいけれど、でも私みたいなのでも必要としてる世界があるってことだよね…
「さて、ボクが話せるのはココまで。あとは君たちがどうしたいか。かな、どうだろうか、その世界へ行ってくれるだろうか…?」
(行きます)
自分の助けを必要としてくれるのならば迷う必要はなかった。
“助けないと”
“そうするべきだから“
その思いに突き動かされて最後の問いかけから考えるまでもなく私は返事をしていた。
「もちろん行ってくれるならば、ボクができる限りのチカラを注ぐし、比較的人目のない安全な場所に飛ばすから、すぐに死んじゃうとかはないから安心してね」
そうして彼も返事をしたのだろう、私達の足元に幾何学模様の陣が浮かび上がった。
「じゃあ、お別れだね。どうかその時まで楽しんで、幸せに生きて」
祈るように紡がれた言葉を最後に再度意識を喪った。
二人が居なくなった空間に一人残ったリタクは呟いた。
「どうかあの世界を救ってほしい。救世の御子達よ」