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短編

お天道さまが見てる

作者: 龍崎 明

 この世界は、神様の眼が映す視界なのだという。神様が認識しているからこそ、この世界は確立され、ここに安定している。


 だから、神様は別に僕達に何かをしてくれるわけではない。ただ、世界がここにあるということは、神様が常に見ているということだから、恥じない生き方をしなさい、というのが教会の教えだった。


 この世界の人々は、魔眼をもって生まれる。攻撃の予測線を見る見切りの魔眼、鍛治における様々なタイミングを知らせる鍛治の魔眼、焦点に火を起こす発火の魔眼、色々な魔眼がある。


 だから、教会は僕達人間こそが最も神様に近い存在だと教えている。


 そして、僕の得た魔眼は、過去視の魔眼。その名の通り、過去を見ることができる魔眼だ。


 使い方を間違えれば、簡単に他者の秘密を暴いてしまえる厄介な魔眼。


 魔眼で見たものの証明はできないから、悪用さえしなければ普通に生きていけるけど、それでもどこか他人からは距離を取られる人生だ。


 さらに、僕の過去視は前世にまで及んだ。


 だからこそ、僕は子どもらしくない子どもだった。既に一回、大人になってるからだ。精神年齢は、外見による扱いの違いで肉体年齢に引っ張られるから子どもっぽいところもあったけど、それでも不気味な子どもだったんだろう。これも他人に距離を取られる理由となった。


 前世は、この世界とは別の世界に生きていた。地球の日本というところで、平和に生きていた。


「お天道さまが見てる」


 前世の婆ちゃんのこの言葉は、この世界の宗教観とどこか似ている。


 もしかしたら、過去にも僕と同じような魔眼の持ち主がいて、教祖になったか、その人に影響を与えたのかもしれない。


 魔眼という実感できる恩寵があったとしても、世界から悪事というものは無くならない。


 僕は、この世界で過去視による事件解決を仕事としている。


 失せ物探しから、殺人事件の犯人探しまで。


 過去視の魔眼が、本当は何を視ているのか、それはわからないけれど。


 今まで間違った光景が見えたことはなかった。


 だから、神様の視界を借りてたとしても不思議じゃない。


「狙われてるのよ、あなた」


 その少女の瞳は、とても綺麗だった。


 その警告は、とても恐ろしかった。


 何もしてくれない神様などいらない。自分達で自分達に都合の良い神をつくろう。


 そう考えた集団に狙われた。


 見守るだけでは、やはり何の意味もないのではないか?


 その問いへの答えを、僕はまだ持っていない。


 彼女の魔眼は、鏡の魔眼。魔眼を写す魔眼。神の素体に狙われている少女。


「干渉する神なんていらない」


 少女の答えは、シンプルだ。


 あくまで主人公は、行動するのは、自分自身だと気高く宣言する。


 悪事の生まれ方は様々だ。


 僕の魔眼が見せるモノは、同情を禁じ得ないものだってある。


 世界は善悪の二つに明確に分けて見ることなどできない複雑な構造をしている。


 結局、人のつくる神は完璧ではないだろう。


 ならば、見守っているだけの神も、人がつくったモノなのだろう。否定する者が現れたのだから。


 この世界にはおそらく神はいないのだ。


 それでも、平和のために、言ったのだ。


 「お天道さまが見ている」と。

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