いつ、誰がこの恋をはじめた? 9
過去に自分がやっていた乙女ゲーム=乙ゲーの二次小説を書いていて、
その中のキャラがこんなことを考えていたらどうだろう?
…というのがキッカケで書き始めた作品です。
舞台は、よくある高校です。
メガネ・崩したスーツor白衣が好物の作者です。
あの後テスト期間になっても、時々部室の電気がついてて。
「図書館か、家で勉強したらいいだろ」
「だって、ここの方が集中出来るし」
って会話を何度かやり取りしつつ、時々脳内に響く声に悩まされつつ数日を過ごした。
とはいえ、何度かあった選択肢っぽいそれに対して、出来うる限りで抗ったつもりなんだけど。
(それでもきっと作者ってのの思うように進んでいるんだろうな、話は)
そうして、今日はテスト最終日で、久しぶりの部活の日でもある。
「部長、ちょっといいか」
「……なんすか、センセ」
「なんだよ、その、あからさまに嫌なものを見るような目つき」
「いや…だって、叱られるような気がして」
「……わかってんじゃねえか、お前」
「え、俺、またなんかやらかした?」
「……いや、まだ」
「は……」
なんともマヌケな反応をしてくれる部長をからかう。
その理由は、ひとつ。
「おはようございまぁす」
「ーーーーっっ」
この場所で彼女と会うのも、久しぶりだから、だ。
(変な日常になってから、どうにも落ち着かない)
「あ、先生。おはようございます」
「あ、あぁ。テスト、おつかれ」
「はいっ」
なんとなく視線をそらしてしまう。
「……先生?」
「さ、て、と。とりあえず、いつものようにストレッチからな。久々だから、ちょっと汗かくくらいしっかりやらせてから、このメニューやらせておけ」
いいながらトレーニングのメニュー表を手渡したのは、彼女じゃなくて部長へ。
「え、は? 俺に? …はぁ、わかったけど」
「俺、一旦職員室に戻るから、急ぎの用があったら呼びに来てくれ」
「はあ」
そのまま、練習場所の第二体育館を出て行く俺。
ぎこちないにも程があるよな。
うん、わかってる。
(なんだけど、さ。選択肢が出てくるような状況を作りたくないんだっつーの)
俺が出来る抵抗も、このレベル。
なるべく彼女と一緒の場所にいないようにするしかない。
そうし続けても、どうしても会ってしまう時がある。
それこそ、強制フラグを立てられた時だ。
(俺が無駄な抵抗をしているのを察しているのか、違うのか。よくわからないけどな)
ため息を吐きながら、職員室へと急ぐ。
特に急ぎのようなんか何もないのに。
無言で黙々と歩いている俺に、背後から大きな声で呼ばれる。
「先生っ!」
って。
振り返るとものすごく遠くにいるのが見えるのに、ハッキリと耳へと声が届いたんだ。
「待ってぇ」
って。
これも、作者からの見えない力によってなのか?
あいつの声だけ、特別、耳に入ってくるなんて。
他にもいろんな雑音が入ってきているはずなのに、なんでなんだろうな。
「足、めちゃ速っ」
駆け足で、俺を追ってきた彼女。
頬を真っ赤に染めて、俺だけをまっすぐ見て。
「もう! 追いつくの大変なんだから!」
怒ったような口調なのに、顔には満面の笑みが浮かんでいた。
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