いつ、誰がこの恋をはじめた? 7
過去に自分がやっていた乙女ゲーム=乙ゲーの二次小説を書いていて、
その中のキャラがこんなことを考えていたらどうだろう?
…というのがキッカケで書き始めた作品です。
舞台は、よくある高校です。
メガネ・崩したスーツor白衣が好物の作者です。
どこかへと、沈んでいく感じがする。
(ここ、どこだ?)
ゆっくりと、海の底に沈んでいくような不思議な感覚。
でも怖いとは思えずに、閉じていた目を開ける。
「明るいな、ここ」
海の底かと思ったそれは、クリーム色の明るい空間の中。
まわりには何もなく、どこまで落ちるのか見当がつかない。
「まいったな……」
そういいながらため息を吐いた途端、体に反動があった。
なにかに落ちた。というか、沈み込んだ。
イメージでいえば、ちょっと値の張る…人をダメにするクッションっぽいアレ。
気持ちいいとすら思えるそれに沈み込んで、思わず心地よさに顔が緩んだ。
「ふわぁあああ」
キャラっぽくない、気の抜けた声をあげながら。
『――――なぁんか、違うな』
ふいに空間の響く、あの時聞こえてきた声。
「え?」
どこを見ていいのかわからないまま、宙を仰ぐ。
『佐伯先生は、こうじゃないな。展開的にいえば、この後は彼女の告白があっていいし。それに翻弄される高校教師か、悪い大人のところを見せる高校教師か。……いや、でも、今回の小説は年齢制限設けている方だから、後者は……無理、か』
今、ハッキリと俺の名字を口にした誰か。
『神田ちゃんの設定は、胸は……Eくらいあってもいいよね。…うっわ、揉みごたえありそ。で、先生の身長は、176あたりかな。顧問やってる部活がバスケ部で、学生時もバスケ部所属だし。それっくらいあってもいいよね。うん。タバコ……は、ありのまんまでいいよね。さっきも、タバコの匂いどうこうって言わせたし。それに…タバコの匂いって、大人の匂いっていうしね。神田ちゃんに、そのワード使って、今後も先生をドキドキさせてもらっちゃおうかなぁ』
「は? 俺? やっぱり、俺なのか。って、神田の名前まで出てきて、一体誰なんだ。この声の主」
とかボヤいたところで、返事があるわけでもなくて。
『誰か後の展開で協力者が欲しいよねぇ。誰にしようかな。メインキャラじゃなく、できればモブキャラがいいんだよな』
「モブ、キャラ」
『…………はぁ。筆が止まらない。佐伯先生こそ、このゲームのモブ・オブ・モブ! メイン攻略キャラも好きだけど、公式が情報出していない先生にこそ、スポットライトを浴びさせたいし、一番弄りがいがあるし。ゲーム内でワンカットしか出ていないのに、ここまであたしの心をくすぐったのは、先生だけ! ……はぁ、好き』
よくわからない話がポンポン出てきた。
ゲーム、モブキャラ。
『メインキャラでも二次小説で潤わせてもらったけど、やっぱりメインは佐伯先生のでしょう! 出来れば18禁がよかったけど、まだそこまでの表現力が……。擬音だらけになって終わっちゃいそうだもん。……いや、待って。書いているうちにスキルがあがって、すっごい濡れ場が書けるようになってたりして。…………きゃはっ。ヤッバーい。どんな体位でヤらせよっかな』
二次小説?
って、ちょっと待て。
「18禁って、俺のか!」
その行為を見られたわけじゃないのに、顔に熱が集まっていく。
「や、やめてくれっっ」
いいながら耳をふさいでもいても、暴走しつつあるその声が収まる気配はなく。
『学校でヤるんだったら、資料室とか生徒指導室? いや、保健室っていうのも外せないよね』
脳に直接響くように、その声は俺が現実で目を覚ますまで続いた。
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