いつ、誰がこの恋をはじめた? 6
過去に自分がやっていた乙女ゲーム=乙ゲーの二次小説を書いていて、
その中のキャラがこんなことを考えていたらどうだろう?
…というのがキッカケで書き始めた作品です。
舞台は、よくある高校です。
メガネ・崩したスーツor白衣が好物の作者です。
彼女の家の近くまで送っていき、帰宅した。
バスタブにお湯を張って、のんびり入浴。
「……んっ、はーーーっ」
おっさんっぽく、長い息を吐いた。
濡れた前髪をかき上げて、天井を仰ぐ。
「なんか変な一日だったな」
今日の、特に放課後の感想。
「変だったけど、嫌なことばっかじゃなかったしな」
とも、思った。
わけのわからない声に、自分がコントロールしきれない何か。
行動だったり、感情……も、か?
「神田…かん、だ……」
可愛いと思わなかったわけじゃないけど、ハッキリ言葉になったのは初めてだ。
ただの部のマネージャーってだけだったはずなんだけど。
こげ茶の、肩甲骨あたりまで伸びたストレートヘア。
片目だけ二重で、ちょっと体調が悪かったり疲れてきたら両目が二重になる。
(そういや、夏の合宿の時にそれに気づいたんだっけな)
夜遅くまで翌朝の仕込みをやって、朝早くからは朝食の準備をやって。
日中は洗濯機を回しながら、昼食の仕込みだのなんだのって忙しそうで。
食材は、俺と一緒にスーパーで買い出しして、二人で段ボール箱を抱えて帰ってきたな。
さすがに三日目あたりで、疲れが取れないからか、目がヤバかった。
神田に好意的な部員が集まって、ぎゃあぎゃあいいながら家事をサポートして。
最終日には、俺からってことで、焼き肉が出来るようにしたんだ。
大体のものが切ってあったから、あとは炭をおこして焼くだけって状態にしてさ。
おにぎりを山ほど握って、ひたすら肉を焼いて、最後には花火をした。
「……あれは、正直まっすぐみられなかったな」
あの時の光景が鮮明に浮かぶ。
サプライズですっていって、浴衣に着替えて出てきたんだもんな。
大盛り上がりで、花火よりも彼女にばっかり人が集まって、記念撮影ばっかりしていた。
「そういや俺も一枚撮らされた」
思い出すと、顔がゆるんでしまう。
レギュラーと俺と神田と。
俺は後列で、髪をアップにしていた神田の襟足が女っぽくて視線を外した瞬間に撮られたような。
「違う、よな? 多分。さっきのは、きっと無関係だ」
今日感じた、一番の違和感。
誰かの声。
強制フラグ。
俺がやらないだろう態度や発言。
神田を、可愛いと意識した自分の中のドコカにある感情。
特に最後なんか、それまでを思い出したら、フラグなんか立ててなくたって。
「IFがあったかもしれない。相手が生徒だってのが、大問題だとしても」
昔、いつか感じたことがあるモノ。
特別愛に飢えていたわけじゃないはずなのに、なんでこのタイミングなんだろうな。
「でも、嫌な気持ちにならないから困るんだよな」
なんていいつつ、これは俺だけの感情で、神田の気持ちは? と思った途端に大きなため息が出た。
「あいつらからみたら、十分オッサンなんだろうし」
一回り差。
話題も興味も体力も違う。
「この気持ちに気づかなかったことにしたらいいだけの話だ」
ぼんやりとした形へと降格させて、意識しなきゃいい。
「神田の悩みのこともあるしな」
車内で聞いた、恋愛相談というか俺の苦手分野。
『男の人は、どんなしぐさをするとドキドキしますか』
性癖とか趣味嗜好とかあるわけで。
オッサンのそれと、神田の同年代のそれと。
きっと欲しい答えは違うはず。
また今度なと逃げたものの、きっと答えを待っている。
「どんな……って」
アレコレ頭に浮かぶのは、全部神田がモデルになってしまう。
「あぁっ、もう。なんでこんな急にあいつでいっぱいになりすぎるんだよ」
のぼせそうな体を勢いよく立ち上がらせ、バスルームを後にした。
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