いつ、誰がこの恋をはじめた? 4
過去に自分がやっていた乙女ゲーム=乙ゲーの二次小説を書いていて、
その中のキャラがこんなことを考えていたらどうだろう?
…というのがキッカケで書き始めた作品です。
舞台は、よくある高校です。
メガネ・崩したスーツor白衣が好物の作者です。
ふと、振り返る。現状を。
なんでかなんて、わからないけど。
俺は、この高校の教師で、神田がマネージャーをしているバスケ部の顧問で。
今日は、ほんっとのほんっとに……たまったま! この場所にやってきて。
神田は高校二年生で、部員のアイドルで。
春から部長になったやつから、まるでナンパみたいにマネージャーに誘われて。
バスケのことはなんも知らなかったのに、部員に教わったりしながら毎日頑張ってて。
で、自力でもいろんな勉強をしてて、夏が合宿なんか食事の内容はすごく考えられた内容で。
そんな神田は、いつも一生懸命で、可愛くて、いつもまっすぐで、可愛くて。
(……んんん? 可愛くて?)
振り返っている現状が、なにかおかしくないか? これ。
あごに親指と人差し指をL字に開いた状態であてて、首をかしげる。
(んんんん?)
俺、どうした? って思ったから。
そんな俺の眼下では、さっき解いたばかりの問題を見直して、ニコニコしている神田の姿。
(可愛いな、やっぱ)
脳内にさっきから浮かんでくる、神田への誉め言葉。
(俺、生徒に対して、こういう感情を抱いたことってあったっけ)
それまでを振り返ってみても、一度もそういったことがあった記憶がない。
一人で不可思議な現状に唸っていると、
「担当教科じゃないのに、先生すごいな」
と、明るい声がした。
それは本当にうれしそうにそういってから、俺を見上げて笑ってみせた。
(……うっ)
無防備な笑顔に、また一瞬だけ手に力がこもる。
なんつーか、変な緊張っていうか。なんなんだろ、俺。
「あのな、生まれてから担当教科だけやって生きてきたわけじゃないからな」
「あはは、先生にも高校生の時あったはずだしね」
「あったはずって、お前な」
普段は敬語を使いがちな彼女が、軽口で話してくるのが新鮮だ。
くすぐったいような、どこかうれしいような。
胸の奥が、じんわりとあたたかさを持つ。
(いい子だな、ほんと)
そう思った次の瞬間、俺はそのセリフを呟いていた。
『もう遅いから、送っていくよ』
彼女に、らしくない笑顔を見せながら。
そのセリフを聞いた彼女は、俺をまっすぐ見上げて、なんともいえない表情をした。
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