歩き出す、恋心 17
過去に自分がやっていた乙女ゲーム=乙ゲーの二次小説を書いていて、
その中のキャラがこんなことを考えていたらどうだろう?
…というのがキッカケで書き始めた作品です。
舞台は、よくある高校です。
メガネ・崩したスーツor白衣が好物の作者です。
「すっごい! 先生! 先生っ!」
打った俺よりも喜んでくれる神田が、駆け寄ってきた。
「あのね! こう、ポーンって! ふわって」
興奮しすぎ。
(あぁ、もう、ほんと…可愛く見えちゃう設定にでもなってんのか?)
胸がとくんとくんとあの感情を告げる音を立てる。
「……ぷ」
こぶしを握って、口元へ。
思わず笑ってしまったのを隠そうとしたのに、声が漏れてたみたいで。
「あ、笑ってるし。ひっどいなぁ、先生」
今さっきまで頬をほんのり染めて、興奮していたのに、今はもうご機嫌ななめだ。
そんなとこも可愛く見える。
作家サマの補正かなんかなのかな。
(でも嫌だ。俺の感情は、俺のものであってほしい)
「ごめん、ごめん」
そういいながら、床のボールを彼女に手渡す。
「じゃ」
と言ってから、ゴールを指さして。
「一本、いってみよっか」
なんて、告げてみる。
ちょっとからかい気味にそう言えば、目で、いかにも嫌ですと返してくる。
「…………あの、キレイなシュートの後に、あたし?」
照れても見えるし、苦手なことを嫌がっているようにも見える。
まぁ、そもそも「じゃあなんでやってたの?」って聞きたくなることをやっていたわけだけど、この話の展開上に必要な流れだったんだろう。
「そうだな、あの辺からやってみよっか。ただし、俺が言うように打ってみて」
おかまいなしに、言葉を続ける俺。
「え、ちょ…せ、せn…」
戸惑う彼女へと手を差し出せば、臆しつつも俺の手を握る。
「ぜったい、無理だし」
拗ねたようにボヤくけど、握られた俺の手を握り返してきた。
「えへへ」
なんて、本当に嬉しそうに笑って。
その笑顔が、胸に刺さる。
本音の笑顔か、違うのか。
聞きたい気持ちがあるのに、聞けるはずもない。
(お前は、俺のどこが好きなんだよ。俺と…どうなりたいんだよ)
コレを恋と呼んでいいのか、切なさで満たされてしまう。
恋に飢えているわけでもないのに、縋りつきたくなる。
(俺に厳しすぎやしないか? 神田。お前視点の話なんだとしたら、俺の願いなんかなかったことになるんだろう?)
あんまりすぎるだろ? 俺のことが好きだっていうわりに。
(俺のことが本当に好きなら、もっと……俺の気持ちも……)
顔に出ないようにして、奥歯をぎゅっと噛みしめる。
以前のような話の展開の中であった、体の関係。
そのきっかけも何もかもの流れを俺は知ることがないまま、この場所に戻された。
また同じ展開に流されてしまうのなら、今度こそ俺の言葉で俺の体で抱きしめたい。
恋愛小説のわりに、この作家サマ=神田は俺の感情に関しては扱いがかなり雑すぎる。
(……もしかしたらだが、そこが穴になったりもするのか?)
雑さゆえに、その部分は目が届いていないと想定してみて…と、神田と会話を続けながら頭だけはフル回転だ。
(神田が俺の行動やセリフを自分好みに特化して誘導しているとして、逆に俺が誘導を仕掛けたら?)
別にコイツと恋愛をすることになったことに、異論を唱えるつもりはないんだ。
ただ、さ。
(恋愛するなら、やっぱ相手の思うままだなんてごめんだ。神田だけのシナリオで進めてたまるかよ)
ボールを手にしたまま、「…ふ」と笑った俺を見て、神田が一瞬視線をそらした。
「恋愛は、二人でするもんだからな…」
小声でもらした自分の思いに、顔をあげなきゃと感じた。
うつむいていたら、足元をすくわれそうだ。
「せんせぇ?」
動きが止まった俺に、少し困ったような顔つきで見上げてくる彼女に。
「さ。やってみようか、俺と」
好意を前面に出して、俺は微笑んだ。
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