歩き出す、恋心 16
過去に自分がやっていた乙女ゲーム=乙ゲーの二次小説を書いていて、
その中のキャラがこんなことを考えていたらどうだろう?
…というのがキッカケで書き始めた作品です。
舞台は、よくある高校です。
メガネ・崩したスーツor白衣が好物の作者です。
(あぁ…。ダメだ。心と頭ん中が、バラバラのぐっちゃぐちゃだ)
あの日のやり直し。
夕暮れ。
窓から差し込む、オレンジ色の光。
その中で、彼女は部員が誰もいない場所で、たった一人で。
(結局は、第二体育館を選択したんだな。書き直しになってても)
部室かここか。その前の段階じゃ、危うく保健室って選択肢もあったっけ。
「もう! なんで入らないの? ……こう、だよね? ……そ、れっっ」
「むーーーーーっっ」
まるでガキみたく、ふてくされ始めるのもそのまんまだ。
記憶を残したままの俺なのに、この光景を見て、作者サマの願望通りに俺の胸の奥であの感情がハッキリ芽吹いてく。
(この娘を可愛いだとか、愛おしいだとか。そう思っちゃうことから、逃げられないんだろうな)
って。
「困ったもんだ。どこがどうじゃなく、説明できないくらいまでになってるなんてな」
体育館の入り口で、小さな声で呟いた俺。
そうさ、とっくに始まってるんだ。
目の前のこいつが本当に作家サマなんだとしたら、プロット通りに。
なにがって?
「――――恋が、な」
認めるさ。
どうしようもない。
きっかけを作ったのが、神田花音という二次作家なんだとしても、俺が抱きはじめたこの感情を嫌うことが出来ない。
確かにショックは大きい。
どこかに行ってしまっただろう、あのレポートのタイトルが正解なんだとするならば…だ。
(懐かしいこの感情を、好意的に思いはじめているんだから)
俺が書き直す前の記憶があることと、誰が話の展開を決める権限を持っているのかを知っていること。
その二つの情報は、目の前の彼女に伝わってるのかな。
(なんせ、ほら、作者サマだからさ)
知ってるかもしれない。知ってて、知らないふりされるかもしれない。
それとも、セリフや展開だけに権限があって、俺の奥底の感情までは把握不可?
どうしたら確かめられるのか、今はわからない。
けれど、もしかしたらの可能性を俺は知っている。
(藤原に会いに行こう)
その行動は、もしかしたら彼女を傷つけるかもしれない。
逆に俺との距離が縮まるきっかけにできるかもしれない。
(かもしれない…ばっかりだ)
いろんな胸の痛みが、俺を責め立てる。
好きの気持ち。信じたくなかった気持ち。愛おしい気持ち。信じたい気持ち。夢の中みたいなこの現実から逃げたい気持ち。
(逃げられなくて、追われているような錯覚を感じる気持ち…も)
頭の中の整理をつける時間が欲しいっていうのに、勝手に話は進んで行っちまう。
「……下手だな」
そういいながら、彼女の方へと近づいていく。
口が勝手にセリフを呟いてしまう。
「あ! やだ! みて…たの? 先生」
真っ赤になって振り向いた彼女は、いろんな感情を抜けば…ほんと、可愛くって。
「ずいぶんと散らかったままなんだな。あいつらは片づけていかなかったのか?」
彼女に近づきながら散乱しているボールをひょいと拾い上げ、片づけていく俺。
「まあ、はい。保健室から帰ってきたら、こう……でした」
苦笑いをみせて、俺と一緒に片づけしだす彼女。
「で、それがどうしてシュート練習?」
ボールを一つ拾って、3Pスリーポイントシュートの場所で軽く放る。
体が、勝手にボールを放る。
「……あ」
ゆるやかな弧を描き、ゴールネットのかすかなパサッという音だけをさせて、ボールは床に落ちた。
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