歩き出す、恋心 14
過去に自分がやっていた乙女ゲーム=乙ゲーの二次小説を書いていて、
その中のキャラがこんなことを考えていたらどうだろう?
…というのがキッカケで書き始めた作品です。
舞台は、よくある高校です。
メガネ・崩したスーツor白衣が好物の作者です。
昨日は、珍しく雪が降ってた。
そして、今日は気温が高かった。
藤原の話だと、彼女がコンビニから出たところで看板に積もっていた雪が、まるで彼女を狙っていたのかというレベルで落ちたらしい。
ベタベタで、水分多めの雪。
彼女が着ていたものや髪は、そのまま濡れて、かなり乱れた状態になっていたという話で。
「それで、たまたま通りかかったので、こちらへ連れてきて、父の会社の系列店から服を持ってきてもらった…という次第です。もちろん、あのままだと風邪をひいてしまいそうだったので、お風呂の準備もして、温まってもらいました。かかりつけの医師も呼び、ケガなどの確認も済んでいますので、心配するようなことは何もありませんよ? 先生」
“心配するようなことは何もない”
あえて口にしているのが、含みを持たせているようで気分が悪い。
「神田くん」
と、藤原が神田をいつものように呼ぶ。
「はい」
紅茶が入ったカップを置きながら、彼女がにっこり微笑みつつ返事をする。
「その服、よかったらもらってくれない? 着心地とか、感想を聞きたいので。なんていうんでしょう、リサーチっていうんでしょうか。女子高生をターゲットにしたものを考えているんですが、相談できる人材が少なくて……。力になってもらえると、大変助かるんですが」
「え? あたしですか?」
「そう、神田くんに」
「あたしの意見なんて、参考にならないし。それに間違って汚しちゃったらって思ったら、なんだか怖いし」
遠慮がちにそう返した彼女に、藤原が笑顔で返す。
「着ていただいた服は、そのまま差し上げます。なので、汚しちゃっても気にしないでいいですよ。それに、先ほど素材についてや袖まわりについてなど…ちゃんと意見を伝えてくれたと思っていますが?」
「……これ、お高いですよね? そんなのもらえません!」
そう言ったかと思うと、どれだけ慌てたのか脱ごうとしている。
「待て! ここで脱ぐんじゃない!」
それに対して、俺が慌てて彼女を止める。
「だって、でも」
といい、戸惑いを隠せない彼女。
「着替えるんでも、ここじゃダメだ」
俺がそういうと、「…あ」と声をあげ、やっと自分がしそうになったことに気づいたらしい。
「……ははっ。そんなに慌てなくてもいいのに。その服、いわゆるプチプラとかいうレベルの金額での購入が可能なんですよ。女子高生は、いろんなことにお金がかかるのでしょう? どれかだけにお金をかけるんじゃなく、いろんなものにお金がかけられるように金額設定をしてある商品です」
そう聞かされて、パアッと顔がほころんだ。
「それって、すっごく嬉しいかも!」
いいながら、改めて服を見下ろして笑う。
本当に、嬉しそうに……。
(複雑な心境すぎるな)
同年代のそれと、彼女が喜ぶことが出来るこいつの環境と。
(俺には簡単に手に入らないものばかりだ)
一回り以上離れたガキに、くだらないやきもちを妬いている。
「マジでくだらねぇな、俺」
ポツリ、呟く。
どうして俺は彼女の彼氏なんだっけって、彼氏という形の自信が削られていく気がする。
(いや。そもそも、自信なんてものあったか)
自問自答しつつ、とっくにぬるくなっていたコーヒーを飲み干す。
「じゃあ、俺は帰るから」
無茶苦茶だ、やってることが。
「俺は、ですか?」
藤原が真顔になって聞き返してきた。
「……ああ」
短くそれだけ返すと、「加納。例のものを持ってきてくれ」と執事へ何かの指示を出す。
持ってきたのは、黒いクリップで止められた、すこし分厚めな紙の束。
「こちらをどうぞ」
怪訝な顔つきでそれを受け取り、真っ白な表紙をめくって中身を確かめる。
「…………お前」
一枚目を見ただけで、何についての紙の束かを把握できた。
「言ったでしょう? 信用に足るのか見せればいいのかどうか、と」
どうやってこの答えにたどり着いたんだ、これ。
戸惑う俺の耳に、軽い足音が聞こえてきた。
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