歩き出す、恋心 12
過去に自分がやっていた乙女ゲーム=乙ゲーの二次小説を書いていて、
その中のキャラがこんなことを考えていたらどうだろう?
…というのがキッカケで書き始めた作品です。
舞台は、よくある高校です。
メガネ・崩したスーツor白衣が好物の作者です。
人の目が気になるというよりも、“藤原”の目が気になって仕方がない。
こうなるのはわかっていたけど、気にしすぎだろう。俺。
警戒しすぎて、彼女と二人きりになる機会を自ら手放している。多分。
「…ったら、こんなメッセージ来るのは、当然だよな」
スマホを見下ろし、後頭部をガリッと強めに掻く。
『和沙さん。今から家に行っちゃ、ダメですか?』
ダメだと返信した俺に、
『先生の好みの下着つけてくから!』
と、そっちの方向での返信が来る。
!←これまでつけて、文字だけなのに彼女の意気込みが伝わるような感じ。
「俺自身は、まだ一度もあの娘とそういう関係じゃないんだけど、どうしたもんか」
その勢いづいたメッセージには、まだ返信できていない。
時間だけがズルズルと経っていく。
返信できないままの隙間に、一回だけ焦れたようなメッセージが届いた。
『どうしたら、先生のそばにいられるのかわかんない』
その言葉が、さっきの好みの下着発言につながっているとか言わないよな。
(体で関係を繋ぎとめようとか……まさか、そんなことまでするもんか?)
確定じゃないけど、勝手に悶々としてあらぬ方向に行ってしまうところがあるから。
「っても、不安なことがあったら話してくれって言いたくても、俺自身が話せることの中に記憶がないものも含んでいると、曖昧な言葉になっちまう。結果的に不安をあおりかねないし……。はぁ」
電気ポットでお湯を沸かし、コーヒーを淹れる。
「ふう…」
コーヒーを飲んだからって、どうにかなるもんでもない。
こうしている間にも、時間だけが過ぎていく。
あれから彼女がまだ悶々としているのか、別方向に暴走しかかっているのか掴んでいない。
メッセージを送るにしても、来いとも来るなとも言えない俺。
「あいつからすれば、体の関係の部分だけが大人との恋愛になってて、他に関しては大人との恋愛をしているっぽさがないんじゃないのか」
恋愛偏差値、極端に低いとは思っていなかったけど、ここまでポンコツに近くなるとは。
「それでなくても普通の恋愛と違うっていうのに、きっと藤原が釘を刺してきた事態に陥る」
互いにとって恐れなければならない事態を回避するためには、違う俺の時間に起きたことを把握しなきゃいけない。
現実世界で探さなきゃいけないデータがあったら、ネットなりアナログな書類だったりで探すための選択肢はあるだろう。
が、今、俺が置かれている場所はそんな場所じゃない。…らしい。
「ほんと、これが俺の夢の中とかだったら、気持ちも多少は違うのにな」
記憶がない日常がある。
そこが、正直気持ちが悪い。
もしかしたら、俺は別人格を持っているような精神病でも患っているんじゃないのか? と思ったこともある。
脳内に響く謎の声や、知らないうちに起きているあれやこれや。
何かの拍子に知ってしまう、作者サマだかの心の声や話の展開。
妄想であってくれと思ったことが、何度あったか。
「……藤原のアレがなきゃ、そっち方面に考えをスイッチしたかったくらいなんだよな」
考えることをやめたかったこともある。
けど、あの娘への好意だけはどうしようもなくて。
「藤原は、どういう手段でか知らないけど、俺が把握していないことを知っている」
俺たちの行動やもしかしたら何かの設定も。
ずずっとコーヒーの残りを飲み干して、テーブルにマグカップを置く。
このマグカップは、俺が知らないうちに彼女から贈られたものらしい。
ちらりと視線だけ動かすと、一人暮らしにありがちな小さな食器棚に、これと色違いのマグカップ。
「……花音」
不意に口からもれた、彼女の名前。
呟いてから、
「え?」
自分で驚く。
『――――嘘っ! ここで名前を呼ばせるつもりなかったのに』
と同じタイミングで、脳内に響いた声。
作者が思っていた展開じゃないということなのか?
手のひらを口にあてて、黙ってしまう。
戸惑いが隠せない。
うつむいた俺に、メッセージの着信を知らせる音が聞こえる。
テーブルに置きっぱなしのスマホには、藤原の名前が表示されていて。
「これ……どういう……」
固まる。
『捕獲完了』
という、たった四文字だけのメッセージがあった。
「捕獲?」
何がだ。
何をだ。
…誰を、だ。
スマホを手にした手に、力がこもる。
眉間にしわを寄せたその時、新たなメッセージが届いた。
画像付きのメッセージ。
息を飲み、メッセージを開く。
スクショしたような画像は、どこかの地図で。
『ここへのお越しをお待ちしております』
とだけ書かれていた。
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