歩き出す、恋心 11
過去に自分がやっていた乙女ゲーム=乙ゲーの二次小説を書いていて、
その中のキャラがこんなことを考えていたらどうだろう?
…というのがキッカケで書き始めた作品です。
舞台は、よくある高校です。
メガネ・崩したスーツor白衣が好物の作者です。
「距離だけどうにかすればいいって話じゃないですよ。…というか、神社の一件以外にも、いろいろやらかしているようで?」
後頭部を掻き、生徒に説教をされている現実を痛感する。
でも、今、こいつは言った。
神社の一件以外、と。
俺が知らない何かだとすれば、できれば情報がほしい。
危険といえば危険。
なにか証拠があったら、俺が知らないとはいえ認めなければただの無責任な大人にしか見えない。
「どこまで掴んでいるんだ、お前は。俺と、彼女のことを」
あえて、名前を言わない。
「そうですねぇ」
と呟いてから、あごに手をあて「ふぅむ」といいつつ、首を傾げた。
「セリフも全部辿った方がいいですか? テスト準備期間の勉強のあたりから」
視線だけ右上に流し、その頃を思い出しながら…か、話を振ってきた。
「は?」
テスト準備期間、って。
「付き合うまえからじゃねえかよっ」
ツッコまずにはいられなかった。
まさかの、二人が始まる前からって…。
「ハッキリと人前でいちゃついていたのが今回っていうだけで、辿ってみたらこっそり会っていたのとかいろいろ出てきちゃった…みたいな。……というか、大変ですね。先生」
「なにがだよ」
さも他人事っぽい言葉に、眉間にしわを寄せる。
「先生、モブキャラなのに、巻き込まれてて」
聞き覚えのあるワードが飛び出した。
「愛されるって、大変そう」
続けて口にしたのが、さっき以上に他人事だと言わんばかりの言葉で。
「お前の目的はなんなんだよ、一体」
どこか、焦燥感を煽られている感覚がするのに、乗らずにはいられなくて。
「さっき言ったでしょう? 何度同じことを言えばいいんですか」
「……そんなお前を見てて、味方になるとか思えるはずがない」
「大人になると、純真な子供の心を疑うようになってしまうんですね。悲しい現実です」
「いやいやいやいや。そうじゃないよな? お前みたいなのが純真って、どこをどう見たらそう見えるっていうんだ」
「…失礼な。これでもピュアな方だと自負しているんですけど」
「自負は、口にするだけなら誰にでもできるだろ」
チラリと腕時計へと視線を流し、「時間ですね」と呟く藤原。
「じゃあ、信用に足るか、見せてみたらいいのでしょう?」
そういったかと思うと、体育館の方へと踵を返した。
「おい! 藤原っ!」
気になる言葉を置いて、先に戻ろうとする背中に声をかければ、顔だけ振り向いて。
「……彼女に好意を抱いているのは、少なくないんですよ? 先生」
さっきのように貼りつけたような笑顔で、呟いた。
味方だと言われたのに、味方だと安易に受け止められない。
(そもそも、あいつが言ってたことを気にせずにはいられない)
どういう意味か、“モブキャラ”と言った。
「まさかのあいつが、作家サマ? …だとしたら、彼女への好意を口にするのは何か違うし」
その真意はいつか掴めるのか、語るのか。
「あいつが自分から語るとは、到底思えないな」
俺の敵だとしても、彼女に好意を持っているのであれば、最悪…彼女を傷つけることはないだろう。
(俺だけでやれることには、作者のせいで制限があるのがネックだ)
あいつが知っているらしい、今までの俺たちのこと。
俺だけで彼女を守り切れないドコカがあるなら、協力者として利用してやる!
「聞こえは、かなり悪いけどな。利用って…悪役みてぇ、俺」
そもそもで、だ。
俺がいるこの小説は、誰視点の話なのかを理解していない。
やたら俺を褒めていたような作家の呟きは、なんとなく憶えているけど。
「ちっとも俺に優しくない展開じゃねえか」
とてもじゃないけど、ヒーローとは思えない。
モブ・オブ・モブとか言われた俺。
「せめて彼女の前でくらい、カッコいいと思われたいとこだが…」
自虐にも近い言葉を吐きつつ、藤原の後を追う。
「何をしてもかっこよさとは無縁なのが悲しい事実ってのがな」
地味な教師としての定位置に、あの頃の俺に戻れたらすこしはかっこいいとこ見せられたのかななんて、たらればを頭に浮かべていた。
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