歩き出す、恋心 6
過去に自分がやっていた乙女ゲーム=乙ゲーの二次小説を書いていて、
その中のキャラがこんなことを考えていたらどうだろう?
…というのがキッカケで書き始めた作品です。
舞台は、よくある高校です。
メガネ・崩したスーツor白衣が好物の作者です。
「今日は、タバコ吸わないの?」
車の中。
不意に聞かれた。
今日はいつもと雰囲気が違ってて、ちょっと大人びたワンピースなんか着ててさ。
「せっかく可愛い格好してんのに、タバコの匂いつけるわけにいかないかなって思って」
俺なりに大事にしたいと思ってした行動。
「そ……、でも…っ。……無理、してない?」
何かを言いかけて、結局聞いてきたのは俺のタバコの心配かよ。
「言いかけたことがあるんだったら、言っていいんだからな」
ゆっくりと車は走っていく。
海沿いの町。
小さな小さな町の、とある神社。
俺なりに調べて、ここだったら誰にも会わずに初詣が出来るかもしれないと思ったのと。
(実は恋愛ごとのお願いったら、ココ! って、聞いたことがあるんだよな)
同じように来るやつがいるかもしれなくても、日にちをズラしたし、きっと大丈夫だろう。
俺も学校にいる時とは格好が違うし、なによりこいつが普段と違って見える。
(俺がこんな風に変えたのか。それとも俺と付き合いはじめてから、ずっとこんな感じなんだろうか)
チクッと胸に刺さるような、自分への嫉妬。
行き場のない思いを持て余す。
小さくため息と吐くと、不安げに俺を見つめる視線に気づく。
「どうかしたの?」
小さな声で聞いてきて、俺の左ひじのあたりの上着をクンッと引っ張った。
「ん? なんでもないって。ちょっと道が悪いから、無事に初詣に行けるようにって思ってただけだから」
とかなんとか、テキトーに言い訳する。
本当は自分と闘っていますだなんて、言えるはずがない。
「……さっき、言いかけたこと、言っても…怒んない?」
上着をもう一度軽く引っ張って、俺へと遠慮がちに聞いてくる。
「言ってみな? 怒るにしても、聞いてから判断するし。ってか、そんなに俺、なんでもかんでも怒ってるか?」
信号待ちの隙に、チラッと彼女と視線を合わせ、微笑んで見せた。
そんな俺の顔を見て、首を左右に振って”ううん”と否定してくれた。
(意識がない時の自分がわからないだけに、ほんと…探り探りだな)
なんでもかんでも怒る俺ではなかったようで、胸をなでおろしたい気分だ。
「で?」
信号が変わり、車はまた走り出す。
「ん、とね?」
ちょっと甘えた感じで切り出すのが可愛い。
「うん」
相槌を打ったのに、その後が。
「……………………」
長い。
どうしたのかと思いつつも、急かすつもりはなく運転をしながら言葉を待ってみる。
「好きなんだ、あたし」
やっと切り出したかと思えば、そんな言葉で。
「????」
主語がない。
前を見ながら、頭の上にはクエスチョンマークがポコポコ浮かんでいる。
「だから、あまり遠慮しなくっていいのにって…思ってて」
「……悪い。主語をくれ」
苦笑いしながら、かろうじてそれだけ返すと。
「あっ」とか言って、どこか恥ずかしそうに照れながら言葉を続けた。
「先生の…タバコの匂いと、先生がタバコ…吸ってるところ」
視界の端っこにちらっと入り込む、彼女が胸の前でもじもじしながら一人恋人繋ぎっぽく手を組み合わせている。
「だから、その……先生と一緒、って…感じがして……好き」
声色は明るくて、照れてて、可愛くて、弾んでて……可愛くて。
俺が聞きたかった、”俺のどこが好き”の一部分。
これしかないのかもしれないし、欠片なのかもしれないし。
手の甲を口元にあてて、ニヤけそうな顔を隠す。
「せんせ…ぃ?」
とくんとくんと胸の奥で、いつもと違う心臓の音がしている。
「……はあ、可愛い」
思わずもれてしまったその言葉に、隣に座っていた彼女が勢いつけて窓の方へと顔を向けていた。
その耳は、真っ赤になってて、二人して何やってんだろうと思いつつも。
(これが、恋だっけ)
懐かしい感覚に、このまま身を任せて溺れてしまいたい気持ちで胸がいっぱいになっていった。
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