いつ、誰がこの恋をはじめた? 2
過去に自分がやっていた乙女ゲーム=乙ゲーの二次小説を書いていて、
その中のキャラがこんなことを考えていたらどうだろう?
…というのがキッカケで書き始めた作品です。
舞台は、よくある高校です。
メガネ・崩したスーツor白衣が好物の作者です。
(強制フラグ?)
趣味にするほどじゃないけど、多少のアプリだなんだで遊んだことはある。
強制フラグというものの意味がわからないわけではない。
強制フラグ=強制的に特定の抽選が当たった状態に設定すること。
何で立てるかというと、その状態の検証や解析、演出効果の鑑賞をする場合に用いられることがあるわけで。
(で、それはさておき、なんでこの場においてそんな言葉が脳内で聞こえてくるんだ)
誰が俺に聞いてるのか、わからない。
フラグを立てるとどうなるのか、わからない。
そもそもこの状態が、わけわからない。
(落ち着け、俺。えーと、俺はここの私立高校の教師で、今日は部室に電気がついているのをみて、消しに来ただけの話で。そうしたら、この子が)
「神田?」
目の前の彼女の名を呼んでみる。小さな声で。
『強制フラグを立てますよ? いいですね?』
彼女の名前を呼んだだけなのに、さっきと微妙に違うセリフが聞こえた。
(誰だよ! ってか、俺、大丈夫か? 頭の中がおかしくなったのか?)
「今日って、そんなに疲れるようなことあったか?」
疲れのせいでおかしくなったのかと思う他ない気がしてきた。
(さっさと彼女を起こして、電気を消して、施錠して帰ればいいんだな!)
そう結論づけた時、これからの行動を決めたはずの俺の体が違う動きをしだす。
『強制フラグを立てました』
その言葉と、ほぼ同時に。
俺は、着ていたスーツのジャケットを脱ぎ、それを彼女の肩に掛ける。
彼女の髪の毛が顔にかかってて、俺はその髪を指先ですくって彼女の耳に引っかけた。
一瞬だけ、彼女がピクンと反応した。
耳に触れた時だ。
その反応に、俺もドキンとして反射的に顔をそむける。
生徒だってわかってるのに、今まで見たことがない彼女を見たようで、女に免疫がないわけじゃないのに照れくさくなった。
「……ん?」
小さく声をあげ、まだ眠たそうな彼女が目を覚ます。
「あれ、ここ…」
そういいながら、ゆっくりと体を起こす。
「あれ、せんせぇ?」
すこしだけいつもより低い声。なんだかドキドキする。
「……勉強していたのか」
そう話しかけると、ふにゃんと顔をゆるめて頷く。
「図書室、めちゃ混みだったし、家だと弟がうるさくて勉強にならないから」
そうか、弟がいるのか。
「先生はどうしたんですか? ふわぁーーー」
質問しつつ、大きく伸びをしたその時。
「…あ」
彼女の肩に掛けていた俺のジャケットが床に落ちる。
「あっ、これ、せんせ…の? え、いつ? す、すいません」
あわてながら拾って、軽く手で汚れをはらう。
「寒そうだなと思って、掛けておいただけだから気にするな」
そういってジャケットを受け取ろうとした俺を、彼女がじーっと見つめてくる。
「どうした?」
と、声をかけてやると、手にしたジャケットを鼻先に近づけて一言。
「ふふ。先生のタバコの匂い…する」
たったそれだけのこと。
なのに。
(なんかいつもと違って、可愛く感じるのは気のせいか?)
トクントクンと、心臓がいつもとは違う音を立てだす。
その何とも言えない痛みのようなものに気づいた瞬間、あの音がした。
ピコン、と。
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