歩き出す、恋心 4
過去に自分がやっていた乙女ゲーム=乙ゲーの二次小説を書いていて、
その中のキャラがこんなことを考えていたらどうだろう?
…というのがキッカケで書き始めた作品です。
舞台は、よくある高校です。
メガネ・崩したスーツor白衣が好物の作者です。
「……絶対にマズい」
ここ数日の記憶がない。
俺の中に記憶すら残す気ないってことなのか? 作者。
盛大なため息を吐きながら、俺は横を見る。
「……なーにやってんだよ、俺」
自室、
ベッドのそばの時計を見れば、今日は日曜。
時間は夕方五時半を過ぎている。
日付を見たら、今日はバスケの交流試合があって、二時くらいで終わったはずだった。
「一体、なにがどうしてこうなってんだ」
作者よ。
現状を中途半端に把握させるなら、全部把握させてくれ。
それか、まるっきり無責任なくらいに俺の意識を奪ってほしい。
こんな中途半端な状況じゃ、俺の心がそのうち折れそうだし、神田にとって無責任な男というか、無責任な教師になりそうで。
「はあ……」
何度目かわからないため息を吐き、ベッドから出る。
そうして、振り返って。
「……どうすっかな」
呟きを落としつつ、冷蔵庫へと足を向けた。
ペットボトルから炭酸を取り出し、グラスへと。
一気に飲み干した時、寝室から物音がした。
踵を返し、寝室へ。
寝室の入り口で足を止め、壁にもたれかかる。
「目が覚めたか」
「…うん」
自分がしている格好にまだ気づいていない神田が、半身を起こす。
部屋に入って、傍らにあるシャツを放った。
「とりあえず、それ着ておけ」
そういうと、自分がどんな格好をしているのか気づいたようで。
「あっ! や…やだっ! み、みた?」
とか、今更なことをいう。
多分俺は半身どころじゃなく、全身見ているはず。
(俺は見てないけどな)
真っ赤な顔をして、きょろきょろと何かを探しているのをみて。
「あぁ、これか?」
ベッドの下に落ちたんだろうそれを拾ってやったら。
「きゃあっ」
俺の手からものすごい勢いで奪って、布団の中に潜り込んだ。
「出て来いって」
布団をはぎ取ろうとすると、ものすごい抵抗してくる。
「多分、今更だと思うけど?」
ほんと、それ。
きっと今更。
(俺の知らない、今更なこと)
「出ておいで、神田」
出来る限り優しい声色で話しかける。
ややしばらくして、布団から顔だけを出す彼女。
「だって、はずかしいんだもん」
真っ赤な顔して、そう呟く。
「あのな、そういうことするなって」
腰に手を当て、やれやれといった風にそう言ってから続ける。
「これ以上、可愛いって思わせてどうする」
とかなんとか。
(あぁ、もう、諦めるしかないのか? この流れ)
またそのうち記憶がなくなってしまうんだろうか。
「どうするって、どうにかなっちゃうの?」
俺の言葉に対して、すこし不安げに言葉を返す彼女に。
「……さっき貸したシャツ、また脱ぐことになってもいいか?」
とか返している時点で、俺じゃない。
こんな俺でいいのか? 神田。
まだ生徒と教師の間なのに、ヤッたってことだろ?
俺の中じゃ線引きする気満々だったってのに、どういう流れでこうなったんだ。
どこか朦朧としつつ、自分が吐いたんだろう言葉の返事を待つ俺。
「…………あの、ね」
「ん?」
こんな俺に、神田はどこか嬉しそうにはにかんでから。
「明るくしないって約束してくれたら、いいよ」
そういった。
(なーにやってんだ、俺)
恥ずかしい思いをさせたんじゃないのか? もしかして。
(俺の性癖って、どういう設定になってんだろ)
内心ドキドキしながら、自分じゃない自分がお膳立てした未来を待つ。
「また先生が脱がせてくれるの? それとも」
体を包んでいた布団をそっと外し、シャツと下着姿の彼女が俺へと両手を差し出す。
ベッドに右膝をつくと、ギシリとスプリングの軋む音がする。
ここはベッドの上なんだっていうリアル感が一気に増す。
彼女は差し出した両手をそのまま俺の体に巻きつけ、優しく抱きしめてきた。
「……ふふ。先生の匂い、好き」
胸元に顔をすり寄せられた瞬間、ドクンと心臓が強く脈打った。
そのままベッドに彼女を押し倒し。
(そして……そして……)
そこでまた、テレビをブツンと消したように俺の意識は俺じゃない俺のものになっていた。
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