歩き出す、恋心 1
過去に自分がやっていた乙女ゲーム=乙ゲーの二次小説を書いていて、
その中のキャラがこんなことを考えていたらどうだろう?
…というのがキッカケで書き始めた作品です。
舞台は、よくある高校です。
メガネ・崩したスーツor白衣が好物の作者です。
あの後、どうなったんだっけ。俺。
それと、神田。
どういう意味でかわからないけど、真っ白になった。
嬉しくてなのか、混乱なのか、別の感情か。
気がつけば、自分の車の中って。
「どゆこと?」
しかも今いる場所は、神田の家のそばだ。
「ってことは、多分送った後」
何を話したのか、逆に何も話さなかったのか。
神田の告白から、関係が変わったのか違うのか。
「なんもわかんねえ」
大きく息を吐き、タバコを取り出した。
口に咥え、火を点け。
大きな通りへと車を走らせる。
帰りしな、量販店でちょっと多めにビールとつまみを買って帰る。
「普通にしてて、寝れる気がしねえ」
それだけの理由だ。
っても、酒には強い方だから、いくら飲めばいいんだかわからない。
ベッドのそばで飲んで、眠くなったら寝ようと思った。
一缶目を飲み、チータラを咀嚼して。
――――そのあたりで、作者が何かしたんだろう。
たった一缶しか飲んでないのに、俺は寝落ちしていた。
ベッドにもたれかかる格好で、朝まで。
「……さむっ」
目が覚めたのは、何も掛けずに寝ていたせいか。それとも、夢の中でのアレか。
「作者の野郎。好き勝手しやがって……、あんなセリフ、俺がいうわけないっての」
不確かを、確か…にされた。
というか、勝手に夢の中で、作者のひとり言が聞こえてきただけなんだけど。
昨日の俺は、二人でボールを片付け、彼女を送るからと誘い。
「なーにやってんだよ、俺は!」
テンプレみたいに、夜景がきれいに見える場所へとドライブをして。
「さっきは、ごめんなさい。あんなこと、先生に言ったところで迷惑でしかないのに」
と、告白を詫びてくる彼女に対してこう返していた。
うつむく彼女の横顔に顔を寄せ、頬に軽く口づけてから。
「俺も同じだ。不謹慎な教師なんだと思う。そして、俺の気持ちを伝えたって、神田に負担しか与えない。……きっと」
頬にとはいえキスをしておいて、それを言うのか。俺。
「先生……」
「それとも、俺の気持ちも伝えていいか?」
見つめ合う二人。
神田は両手を胸元で指を恋人繋ぎのようにし、俺へ何かを祈るような格好で頷く。
「わかってるだろうけど、俺は教師で、お前より大人で。いろんな立場があって、同じ部の顧問とマネージャーで」
「…はい」
「どの生徒もみんな大事で、可愛くて」
「…はい」
「俺は俺で、大した目立つ教師でもないし。特別なスキルがあるわけでもない。だから、どうして好意を持ってもらえたのか…わからない」
「そんなっ」
「だって、そうだろ? もっとかっこいい教師はたくさんいるし、神田と同年代にはもっと魅力的なやつらが多いだろ。センスがいいやつもいたし、神田のことを大事に想っている奴のことも、俺は知っている」
「違うよ? 先生」
「え」
「あたしは、別に…かっこいいとか悪いとか、センスがいいとか悪いとか。そういうとこで、先生のことを」
と、生徒に慰められはじめる、それこそかっこつかない俺。
なのに、神田はそうじゃないって言うんだ。
「先生だから、好きなんです。教師だからとか、大人だからとかでもないんです」
「…神田」
「気になっちゃうんです、どうしても。目で追っちゃうんです、いつも」
誠実って感じがする。
嘘っぽさが見当たらない。
「ね、先生。それって」
そこまで言ってから、俺をじっと見つめて。
「恋、ですよね」
恋の定義。
素直なこの娘だから、俺へとくれたんだろう。
だったら、俺もその想いに応えたい。
「……じゃあ、俺も」
そういってから、彼女が祈るように組んでいる手の上にそっと手のひらを重ねて。
「恋、してんだろうな。お前に」
耳元に顔を寄せ、囁いた。
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