表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/37

いつ、誰がこの恋をはじめた? 14

過去に自分がやっていた乙女ゲーム=乙ゲーの二次小説を書いていて、

その中のキャラがこんなことを考えていたらどうだろう?

…というのがキッカケで書き始めた作品です。

舞台は、よくある高校です。

メガネ・崩したスーツor白衣が好物の作者です。


「力みすぎ。あと、足はそろえるな。朝礼で並んでるみたいなやつな。肩幅程度は開いとけ」


それと…といいつつ、ボールを一旦床に置き、ひじの高さや利き足を聞いて位置を調整したり。


「ひざを柔らかく使う感じで、ボールを持たせて……。それから」


一緒になってボールを持ちながら、細かく教えていく。


「まずは、最初に言ったように、体の力抜いてー」


「うんうん」


「俺が隣で同じように打つから、頭の中にイメージもしっかり作って打ってみろ。イメージって、結構大事だからな」


「うんうん」


「…聞いてるのか?」


「うんうん」


「かぁんだぁあ?」


「き、聞いてますってば」


あまりにも同じ返事ばかりだったから、ほんのちょっとだけ圧をかけてみたけど、逆に嬉しそうにしている。


「ま、いいけどな。とりあえず打ってみるか」


いいつつ、ちょっと待てと手で制して、近くに転がっているボールを拾ってくる。


「ここにあるだけ、いってみよう」


俺も約束したように、彼女の横に立ってボールをかまえた。


「じゃ、いくぞ」


「はいっ」


「うん、いい返事だ……っと。ほい」


吸い込まれるようにゴールへと向かうボール。


「うわっ」


「ほら、お前の順番」


「は、はい」


「リラックス!」


「あ、はい!」


一本目は、届かずに落下。


「…ほい、二本目」


「むー」


俺に続けて、二本目を打つ彼女。


「あ!」


リングに触れたのに、跳ねて外れる。


「惜しい! さ、次!」


三本目を打つ俺を見て、彼女は何度か頷いてから息をふぅと吐いて、ゴールの方へと目を向けた。


(……あ)


体に余計な力が入っていなかった。


ひじの高さもよかった。


シュートを放った後の姿勢も良し。


「あぁっ」


危うくまた跳ねて外れるかと思ったけど、シュートが決まった。


「ちょ、え、やだ、ほんと? え?」


入ったっていうのに、本人が疑ってるって。


「出来たんだから、素直に喜べばいいだろ」


「だって、入れ! って念じたけど、こんなにすぐに入るだなんて」


「よかったな」


一歩踏み出して、彼女の頭を手のひらでポンとする。


俺に目を合わせたまま、彼女が。


「神……田?」


ぽろぽろと、涙をこぼす。


「どうした? 嬉しくてか? それとも俺が触れたから…」


「違う、の」


ぽろぽろと、涙を流しながら、どうしてか微笑んだ。


「お前、なんで…そんな」


辛そうな笑顔。


微笑みながら泣く彼女をみて、自然と体が動く。


(これも小説の流れとか、いわないでくれよ?)


と、願いながら。


「悪い、神田」


小さな声で謝ってから、もう一歩彼女へと近づいて。


「そんな顔して泣くなよ」


自分の胸元へ、右腕を彼女の頭に回して引き寄せた。


無意識な俺は、眼下にある彼女の頭に唇を寄せる。


小さなリップ音がした瞬間、彼女がガバッと顔を上げる。


「せん……」


目にはまだ涙が浮かんでて。


一瞬、口が開き、何かを言いかけてから唇をきゅっと結ぶ。


「言いたいことあったらいえよ」


大丈夫か? と心配になってそういえば、小さな声で何かを呟いた。


「え? なんて?」


首をかしげて聞き返すと、わずかなためらいのような間の後にポツリ。


「ごめんなさい」


と、なぜか謝ってから。


「……センセイは、先生なのに。好きに…なっちゃ、だめなのに」


どこか苦し気に、胸の奥から押し出したセリフみたいに呟いた。


重なる視線。


静かな体育館で、俺は彼女を抱き寄せたまま、彼女から目が離せなくなっていた。




誤字脱字、ございましたら、ご指摘お願いいたします。

お気に召していただけましたら、いいねetcもお願いしまーす。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ