神の子のプレゼント
アダムは慌てて顔を背ける。
か、顔が熱い………!なんなんだ一体………!
最近の悩み、それはセラフィールを見ると顔が熱くなること。いや、それは前からそうなんだけど、なんというか………日を重ねるにつれてそれをすごく感じるようになった。
何かの病気か?と思ったが僕は神だ。病気にはならない。じゃあなんでこんなに胸が痛い………?
「………?アダム様?」
「はうっ!」
突然声をかけられて変な声が出てしまった。セラフィールはこてん、と可愛く首を傾げている。
「そ、それより!今日は何を持ってきてくれたの?」
「?……今日は数術をやろうと本を持ってまいりました!」
「いいね、楽しそう。今日はなんの定理の話をする?」
「ええっと……たしかこのページに………」
セラフィールはパラパラと数術の本を開く。沢山ページの端が折れている。すごく真面目でいつも勉強をしているんだ。僕も実技よりも勉強の方が好きだからそれも楽しい。
僕がわからないことをセラフィールが知っていたり、セラフィールがわからないことを僕が知っていたり……話していて話題が無くならないんだ。
そんなことを思いながら、定理のあれやそれを話した。
* * *
「この定理は、どう使うのですか?」
「ああ、それはね………」
「んっ」
「?」
そんな話をしていると、セラフィールが突然お腹を抑えた。アダムはセラフィールを覗き込む。
「どうしたの?セラ」
「えっと、ネイビスがちょっとコルセットに引っかかって」
「…………ッ」
ネイビス。それは僕が誕生日プレゼントに用意した代物だ。……誕生日プレゼント、というのは建前で、出会って1年ということであげたネイビス。僕の魔力を込めた銀色だ。未だにつけてくれてるのが嬉しい。
僕も自分のへそにセラフィールの瞳と同じ緑色のネイビスを着けているのは秘密だ。……なんて、僕気持ち悪過ぎないか?
そこまで考え首を振って、セラフィールを見た。
「大丈夫?い、痛いなら外していいよ」
「嫌です。……アダム様から貰ったプレゼント、肌身離さず持っていたいんです」
「…………」
そう言ってへその辺りを手で抑えるセラフィール。……本当にこの子はなんでそういうことをサラッと言えるのだろう。聞いている方が恥ずかしい。
赤くなるアダムに、セラフィールはくすくす笑う。
「性格は違うのに、すぐ顔を赤くするのはわたくしのお父様に似ています」
「う、うるさい!僕はお前の父親のようにお菓子作りも刺繍もなにもできないぞ!」
「知っています、アダム様は不器用ですもの」
「う………」
セラフィールは目を細めて笑う。
本当に笑ってばかりの女の子だ。1度くらい怒らせてやりたいと思うけど、何をやっても怒らないから不思議なのだ。
「それより、もう少しこの定理の話を致しましょう。アダム様、教えてくださいまし」
「わ、わかったからあまり近づくな………」
セラフィールとアダムは再び数術の本を読む。しかし、アダムは少しだけ近い距離にドキドキしてしまい、あまり頭には入ってこなかった。
* * *
「~♪」
ブロセリアンド城、アダムの自室。
アダムは上機嫌で本を読んでいた。セラフィールに借りた『サクリファイス大帝国の歴史』という本だ。
中々に見応えがあるもので、城に帰ってからずっと見ていた。