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神の子の側近は呆れる

 


 「なんだ、居たのか」



 「なんだ、じゃないです。貴方が何時間も居なくて旦那様がとてもお怒りになったのですよ。


 貴方も怒られたじゃないですか」



 「そんなの忘れた。で、何の用だ?」



 「…………偉く上機嫌ではないですか。


 よほど有意義な時間を過ごしたのですか?」



 「………詮索をするな」




 アダムがそう短くいって枕に顔を埋める。ラウはふぅ、と溜息をついた。

 ………この主人はとてもひねくれているけれど、なんだかんだわかりやすいのだ。



 先程からずっとニコニコしていたのに楽しくなかったわけがない。いつもこういう顔をしていればいいのに、とお節介な従者は思う。



 そんなことを思っていると、アダムが『ラウ』と自分を呼んだ。



 「なんでしょうか?」



 「…………4日後までに父上への言い訳を考えておけ」



 「!?また抜け出すつもりですか!?」


 「詮索するなと言ったろう」



 アダムはそう言って魔法で机の上に置いてあった甘いミルクの入ったコップを引き寄せてベッドの上で飲む。



 悠々としている所は神だが、行動は神ではない!



 「なりません!旦那様に閉じ込められますよ!」



 「閉じ込められる………いいなそれは。抜け出しやすい。


 ラウのくせにいい事を考えるじゃないか」



 「……………」




 ラウは呆れた。この主人はこのとおり滅茶苦茶な事を言っているけれど、本当にそれが出来るのだ。



『ブロセリアンドで今一番神に近い子供』と呼び声が高い。まさに神童なのだ。


 しかしこの通り規律を嫌い、自由気ままに暮らしている。『神は何にも縛られない』という教典通りの神である。



 そんなことを考えるラウを他所に、アダムは再び思考の海に飛び込む。



 …………セラフィールの持っていた本の文字、読めなかったな。やはり別の世界だからか?しかし、言葉は通じたぞ。


 何はともあれ、不思議な女____早く、早く4日後にならないかな。




 そんなことを思いながらアダムは1度目を閉じた。





 * * *





 「アダム様!」



 「………セラフィールか」




 4日後、再び僕はあの場所に足を運んだ。すると、セラフィールがやっぱり本を読んでいた。


 僕に気づくと、笑顔で手を振るセラフィールにまた顔が赤くなる。本当は僕が早めに行って、『たまたま来てただけだ!』と言おうとしていたのに………




 そんな僕の気持ちなど知らないであろうセラフィールはニコニコしながらまた僕を引っ張る。



 大木に来てすぐに、セラフィールは置いていた籠を見せてきた。中には___シンプルなショートケーキが。




 「今日はおやつも用意致しました!アフタヌーンティーは出来ませんが、よければ食べてください。


 わたくしの手作りで申し訳ございませんが………」



 「………!セラフィールが作ったのか!?」



 「?ええ、わたくしはお父様とよくお菓子作りをするのです」



 僕が驚くと、セラフィールは首を傾げて肯定する。だって僕より小さいのにこんなに美味しそうなケーキを……?それに、お父様って、お母様の方ではなく?



 そう疑問に思うが、セラフィールの眉が下がっていく。…………これは食べなければまた泣くかもしれない。



 そう思ったアダムは『じゃあ……』と小さく言ってケーキを一欠片取った。そして、口に含んでみる。



 「…………!」




 ホロホロと口の中で溶けていくケーキ。甘酸っぱいいちごと相まって美味しい。城で食べるよりも全然美味しくて、思わずセラフィールを見た。



 「美味しい………!美味しいぞ、セラフィール!」



 「………!ふふ、よかったです」



 「……………ッ」




 思わず本音を言うと、セラフィールは驚いた顔をしてからすぐに笑顔を見せた。とても嬉しそうな顔にまた顔が熱くなる。



 なんだ、これ………?



 アダムは疑問に思いながら、黙ってケーキを食べた。あまりにも美味しくて、手が止まらず、セラフィールの分まで食べた。









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