現在の僕と家族は
「…………ふう」
サクリファイス大帝国北部にて。
アダムは青い炎に囲まれながら一息ついた。今回の魔物は中々の大物で、久しぶりに青い炎を使ったな…………
「あーっ!一足遅かったァ~!」
不意に、元気な声が響きわたる。振り返ると、黒と白のごまプリン頭のワンピース姿の女………シエルだ。シエルは頬を膨らましながら僕に詰め寄ってくる。
「少しは残してくれても良くない!?神だからって良いとこ取りよ!このチートボーイめ!」
「五月蝿い。…………寧ろ感謝しろ。お前、妊娠してるんだから」
アダムはふい、と顔を逸らす。
そう。この女は6年前に宰相を務める義弟と婚約、そして5年前に結婚し、とうとう孕んだ。16歳の子供と契ったのだ。変態だと思ってる。
「変態なんて失礼な、フィアは私の嫁!」
「嫁はお前だろう。……聖女というのは馬鹿なのか?」
「私はもう聖女やめました~!今は普通のお、ん、な♪」
「ショタコン黙れ死ね」
「失礼しちゃうわ!………それより、早く帰ってあげなさいよ。お姉様との記念日でしょう?ここの後始末は私がやるから!天使のお姉様を泣かせたら聖魔法ぶちかますわよ!」
「…………」
こんな女の聖魔法なんか怖くないけれど、………もうすぐ約束の時間だ。早く帰ろう。
そう思ってふ、とその場から消えた。
* * *
「よ~、アダム!」
「…………」
転移魔法で帰ってくると、運が悪い事にアドラオテルと出会ってしまった。アダムが顔を顰めていることなんてお構い無しに話す。
「今日も魔物退治?お疲れ様だねえ」
「………次はお前が行けよ、アドラオテル」
「やなこった。俺は皇帝だぞ?」
「皇帝見習いの分際で何言っているんだ、働け」
「働いてるじゃん、『ドラゴン仮面』の収録も頑張ったぞ!」
「…………」
そう。アドラオテルは今、皇帝見習である。女帝・アミィールの仕事を姉と共に2年前から手伝っているのだ。とはいえ、この馬鹿な男に政治的な事は無理で、主に娯楽を考えたり、武術の訓練などを行っている。
「………お前、ミコトがまた怒るぞ」
「それは多分妊婦特有のストレスだろ?俺は悪くないもーん」
そう言ってぷい、と顔を逸らす。多分怒られた後なのだろう。ミコト_コトの本当の名前らしい_とアドラオテルは6年前のあの日に想いが通じあって、結婚した。
どうやら僕達のように想いを重ねていたようだし、あの時のミコトはアドラオテルの為に動いていたから驚かなかった。子供が出来たとはいえ何も変わらないアドラオテルはやはり変わっている。
「アダムに言われたらおしまいだよね~、それより、早くアイツの所に行ってやんなよ。もう仕事片付けてあの場所に行っちゃったらしいぞ?」
「………わかっている。じゃあな」
「ほぉ~い、そっちも気をつけてね~」
アドラオテルの軽い口調を聞きながら、歩き出す。……ムカつくことも多いけれど、1番兄弟のように接しているのはアドラオテルだ。嫌いじゃないのがまた悔しいが、な。
アダムはそんなことを思いながら少し早く歩いた。