結局チート
アダムは短くそう言って、セオドアを見た。セオドアは___否、シエル、コトも泣いていた。僕も、泣いている。
僕達が、愛おしい人を守れたのは___紛れもなく、あの人達のお陰だ。
「アルティア、ラフェエル、フェリクス………………あの3人は………」
「っ、こんなの、こんなのおかしいよ……」
「っ、あぁ、私のせいで、また………」
愛する人を救う為に、愛する人の家族が命を捧げた。全てが終わって、それを実感して………辛くなる。言葉も出ない。
そんな中、セオドアが涙を零しながら、困惑しているアミィールに向けて言葉を紡いだ。
「アミィ、聞いてくれ………アルティア皇妃様と、ラフェエル皇帝様、フェリクス様は…………『なーに、呼んだ?』………は?」
「!」
不意に、軽快な声がした。
見ると____黒の長髪、黄金……否、金色の瞳、黒いドレスを纏ったアルティアと紅銀の髪、紅い瞳の豪奢な服を着たラフェエル、そして茶色の大きな犬………フェリクスが居た。
泣いていた4人は目を見開く。代表して、セオドアが聞いた。
「…………アルティア皇妃様、と、ラフェエル皇帝様、リアム…………?」
『せいかーい!セオくんの大好きなアルおばさんだよ~!』
「な、何故!何故貴方がここにいらっしゃるんですか!?」
セオドアは思わず声を張り上げる。
しかし、それに答えたのはラフェエルだった。
『___ルシファーの代償で、私達は"神"と"精霊"になったのだ』
「な、にを……仰ってるんですか………?」
『私達は死ぬはずだったの!けどねー、ルシファーに命を差し出した人間は、死ぬより辛い不死になり、神として生きるらしくて。
で、私は"月神"になっちゃった☆で、ラフェーは"雷の精霊"!リアムは神の使い、"狛犬"になっちゃった!
って事でー、私達、死んでない!』
「…………」
「…………」
「…………」
全員が閉口する。以前セラフィールが言っていた。『おばあ様達は滅茶苦茶だ』と。
本当にその通りだと、思った。
でも。誰も死ななかった。よかった……………。
アダムはそこで膝を着いて、大きく息を吐き出す。セラフィールは心配してアダムの傍に寄り添ったのだった。
* * *
それから、月日は流れて。
「…………父上、仕事終わりました」
25歳を迎えたアダムは、ぶっきらぼうにそう言った。父上___セオドアは険しい顔でその書類を受け取る。
「ありがとう、………けれど私はお前の父上ではないぞ」
「お父様、早く次の仕事をください」
「……………これ、お願いね」
嫌味ったらしく『お父様』と言ったら整った顔を顰めてそう言った。………このセオドアと出会ってもう6年も経ったというのに、未だに仲良くはなれそうもない。話はするが、とても距離を置かれている。
しかし、距離を置かれるなら、置けないほど近づいてやろうと思っている。何故なら、この『父親』はこれでも家族なのだから。
「………アダムくん、魔物がサクリファイス大帝国北部に居るそうだ。頼めるかい?」
「わかりました、父上」
「……………」
魔物。___6年前のあの日、闇の聖杯によって生まれた異形は今も尚蔓延っている。自分たちの事で精一杯だったが、そうも言ってられず、その退治を請け負っているのだ。
その任は主に僕に与えられる。僕は未だに神の力を有し、死なないから。
アダムはふ、とそこから消えた。




