救出、成功
※話が短いので、第2部主人公視点をいれました。ご了承ください。
少し時間を遡って。
「………」
アミィールは龍の姿で、沢山の死体に囲まれながらとぐろを巻いて呆然としていた。
___沢山の死体。それらは全て、わたくしが殺した者達。つまり、ここはわたくしの地獄なのだろう。
何故ここにいるのかなど考えない。
次に死ぬのはわたくしの番。
沢山の罪を重ねたのだから、自分が死ぬことに悲観してはならない。
そもそも、わたくしは死にたくない理由など………『アミィ』___!
心地よい声が、鼓膜を揺らす。
わたくしが唯一愛した男の声。思わず上を見上げた。大きな、水色の契約印が刻まれた掌。………あの御方の、掌。
アミィールは、その掌を見て揺らぐ。
生きてはならない。知っている。
沢山の罪を侵してきた。知っている。
なのに。………それでも。
____あの御方に、会いたい。
そう思ったアミィールはその掌に向かって、自分の手を伸ばした。
すると、暗闇や死体が消えて___ヴァリアース大国や、皇城敷地にある『運命の場所』に居て。そして。
「アミィ!」
群青色の髪、緑の瞳の愛おしい、誰よりも、何よりも愛おしい御方に抱かれていた。わたくしは、殆ど反射的に、その名前を紡いだ。
「せ、お…………?」
「………ッ、アミィ………」
セオドア様はポロポロと涙を零して、わたくしを抱き締めた。何が起きているのか、どうしてここに居るのかわからなくて、問うた。
「わたくし、何が………ッ」
「アミィ、大丈夫か!?」
くら、と眩暈を起こすと、すぐさまセオドア様が抱きしめてくださった。もう20年も共に居て、慣れ親しんだ感触が心地いい。
「大丈夫です、………何が、起きているのでしょうか?」
「………ッ、そ、それは…………!」
セオドア様が何かを言う前に、パリン!と音を立てて空間が割れた。そこには___セラフィールと、アダムという男が抱き合っていた。
* * *
「セラ!」
「セラ!」
「お父様、お母様………きゃっ!」
空間が割れた、と思ったらセオドアがセラフィールを引っ張ってアミィールと呼ばれた女と共に背に隠して睨んだ。
「何故、君がここに………何故、セラフィールが裸なんだっ!」
「お父様!裸だったのは龍の姿で居たからです!アダム様は何もしておりません!」
「………」
………どうやら、セラフィールが前に言っていた通り、この男は相当な親バカらしい。ここで口論している暇などないというのに………
アダムは呆れながら、それでも口を開いた。
「………そんなことより、ここを出よう。セラフィールと貴方の奥方は助かったのだから」
「…………ッ、わかっている。
しかし、どうすれば…………」
「簡単だ。ここは意識内であれば、念じるのだ。
全員で魔力を放出して、生きたいと願うんだ」
「わ、アダム様………」
アダムはそれだけ伝えてから、再び自分の腕の中にセラフィールを居れてセオドアを睨む。セオドアも睨み返した。
「………セラは私の娘だ」
「これからは僕の伴侶になる。
………セラ、共に生きてくれるか?」
アダムがそう聞くと、1度だけ父親を見て……それから頷いた。
「ええ。………わたくしは、アダム様と生きたいです」
「ん。………なら、帰ろう」
「はい、共に___帰ります」
セラフィールがそう言って微笑むと、ふわり、と身体が浮いた。僕とセラフィールはお互いを抱きしめ合いながら上昇する。
____何があっても、もう離さない。
____この御方となら、いつまでも共に居れる。
そう思いながら____僕達は、意識を手放した。
* * *
「…………ん」
「アダム様!」
目が覚めると、眼前にセラフィールの顔が広がっていた。ドレスを着ている所から、無事意識を抜け出したようだ。
そんなことを思いながら、闇の聖杯を見る。闇の聖杯はとても小さくなっており、禍々しい光は消えていた。そんなことを思っていると、同じように目覚めた龍神の血筋達は騒いでいた。
「身体、軽い」
「………ミコトのお陰だ。『代償』が無くなった俺達は最強だな!」
「アド、あまりはしゃがないでくださいまし」
「アダム様、アダム様のお陰で、わたくし達は………龍神の代償がなくなりました。
ありがとうございます」
「いや………それは違う」