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天使は駆ける

 






 優しいお父様もいない。



 厳しいお母様もいない。



 五月蝿いアドラオテルもいない。



 可愛いフィアラセルもいない。




 …………あとは?



 後は誰か居た?



 大切な、大切な御方が居たはず。



 けれど、名前を思い出せない。



 ……………頭、痛い。



 _____もう寝ましょう。



 化け物のわたくしは、家族がいない場所で生きていく自信、ありません。


 一生此処で一人ぼっちだとしたら、きっと死んでしまう。1度寝たらもう起きれない気がするけれど、それでもいい。



 何故ならわたくしは____『セラ』………?











 不意に、声が聞こえる。素っ気なくて、優しい声。辺りを見渡していると、再び声がした。




『セラは化け物じゃない。___女の顔と身体だ。


 セラは、セラだよ』




 ____!




 その言葉を聞いて、龍の姿が解かれていく。裸のまま、暗闇の中を走り出す。



 この声。この言葉。



 ____好きな人、まだいた。




『セラと出会って、毎日楽しい』



『セラ』



『セラ、愛してる』



 走りながら愛おしい声が鼓膜を揺らす。

 走って、走って、真っ暗闇の空間が彩られていく。




 そして。




 「はぁ………はぁ………!」



 彩られた場所は____あの御方と出会った『運命の場所』。



 大きな木に、小さな泉。花は咲き乱れ、沢山の花弁が舞う。いつ見ても綺麗な場所なのに、あの御方の姿はない。



 あの御方を呼びたいのに、名前が思い出せない。名前が思い出せないのに会いたいと思うのは間違っているのかもしれない。


 でも、会いたい。



 わたくしは出会いたい。



『僕は、セラの大きな白い翼が好きだ』




 ………………。




 その言葉が聞こえて、セラフィールはぽつり、魔法を唱えた。




 「____フライ」




 白い大翼が生まれた。羽根が抜けて、花弁と共に舞う。名前は思い出せなくとも、これだけは忘れてなかった。



 あの御方は____わたくしがこの翼を生やすと、会いに来てくれる。



 会いたい。



 わたくしは此処です。




 どうか、お姿を____「セラ!」…………!



 名前を、呼ばれた。

 また言葉だけ?と思ったけれど、そうでは無い。



 銀髪の髪を揺らした、紅い瞳の殿方。

 どこか神々しく、でもひねくれている………わたくしの愛おしい御方。




 ___そうだ。



 ____思い出した。



 彼の名は______




 「アダム、様…………」






 わたくしの口が愛おしい御方の名前を呟いたと同時に、抱き締められた。





 * * *





 セラフィールの意識は、真っ暗だった。

 不安定な世界、……きっと、寂しがり屋なアイツの事だから、泣いている。


 そう思って歩いていたら、白い羽を見つけた。


 ………セラフィールの、羽根。

 これを手に取ったら、暗闇が一変、逢瀬場所に居て。




 そこに____居たんだ。

 僕に運命を、………『神の存在』を教えてくれた天使が。



 出会った時は戸惑った。けど、今の僕は戸惑わない。だって、………その天使は、僕の大切な人になったのだから。




 「セラ!」



 「………アダム、様………?」




 何故か裸のセラフィールを抱き締めた。

 甘い匂い、小さな可愛いセラフィール。

 僕の………大切な人。



 それを見た瞬間、涙がとめどなく溢れた。


 「セラ、セラ………!」



 「ッ………アダム様、わたくし、は何故………此処に………」



 セラフィールは覚えてないようだった。僕は何があったかを、セラフィールを抱きながら説明しようとした時、パリン、と音がして…………見ると、セオドアと、裸の女帝が居た。



















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