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混沌の中で想うのは

 




 サタンは木っ端微塵になって死んだ。

 100万年前の存在が一瞬で無くなったんだ。龍神とアマテラスの子孫の強さに驚いていたいが、そんな暇はなかった。



 「………闇の聖杯が、消えない…………!?」



 そう、闇の聖杯は消えず、この玉座の間に在り続けた。持ち主が消えれば死ぬ、この闇の聖杯はサタンの物だ。しかし、消えないのだ。その問いに答えたのは___サタンの言霊だった。



【ふ、ふはは、………我が死んでも、闇の聖杯は消えぬ、龍神が死ぬまで消えぬのだ!『龍神の身体を入れ替えない』限りな!


 悶え、苦しめ!サクリファイス皇族よ!】




 「くそったれな神………【「緊急ニュースです!」】!?」




 アルティアがそう呟いていると、ぱ、と大きなモニターが現れる。そこには___沢山の魔物に襲われる国民が映し出されていた。アナウンサーらしき女が言う。




【「ユートピア全土に、異形が現れています!避難をしてください!サクリファイス皇族様が現れるまで、持ち堪えてください!」】




 「な、に………これ………」




 「ラフェエル様!各方面からSOSが出ています!」



 突如現れた茶髪茶瞳の男はラフェエルと呼ばれた男に報告する。



 ラフェエルはそれを聞いて、アルティアを見た。




 「アル」



 「………わかっているわ、ラフェー、指示を」



 「………全兵士に伝えろ。異形の殲滅を行う、国境問わず総動員で当たれ、と」



 「は!」




 そう返事をし、消えたのを確認してから未だに苦しむアミィールを抱くセオドアを見た。



 「セオ、お前は無線を使ってアミィ、セラ、アドの容態を私とアルに伝えろ。


 そして………小僧と小娘達、お前らもだ」



 「は!」



 「………はい」



 「う、うん!」


 「………ッ」



 2人はそれだけ言ってその場から忽然と消えた。アダムは意識を失っていながらも黒い魔力を吸われているセラフィールを抱き上げ、少しでも聖杯より遠くに移動した。あいにくこの玉座の間からは逃れられないようだ。シエルもフィアラセルを抱え、セオドアという父親もアミィールを避難させた。



 しかし、コトだけは聖杯に拘束されたアドラオテルを必死に引っ張っている。



 ____父の言っていた『死ぬ』という言葉はこの事だと思った。全知全能の神というのはなんともムカつく。………否、ムカついている理由は___父ではなく、無力な自分に、だ。



 「アダムくん、君はあの聖杯の事を知っていたね?なにか、何か知らないのか!」


 「知っていたら………知っていたら、もう何とかしている。


 闇の聖杯は………持ち主が居なくなれば壊れるはずなんだ。あのサタンが最期に言っていた。『龍神が死ぬまで壊れない』と」



 「ッ、巫山戯るな!」




 セオドアはダァン、と地面を叩いた。悔しげに僕を睨んでいる。……僕だって余裕があるわけじゃない。



 ___これからずっと一緒だと思ったのに。



 ____こんな結末があるか?



 ____運命だと思っていた出会いが、時間が消えていく。



 そう考えると涙だって溢れてくる。

 泣いている暇などない。



 考えろ、考えろ。




 セラフィールが生きる方法を、考え___「ふぅん!」………!




 パァン、と大きな音がした。

 隣にいたシエルが、自分の頬を叩いていた。その横顔には__『絶望』はなかった。



 「お父様!お兄様!そして……そこのお姉さん!


 暗いわ!とっても暗い!空も暗いけどあなた達は暗くならないで!」



 「………シエルちゃん、頼むから、今は巫山戯たことを言わないでくれ。余裕が無い。だから………「絶望しても、何も変わらない!」………!」



 シエルはそう怒鳴った。

 自分の拳を握って、全員に聞こえるように言う。



 「私はッ……フィア様が好き!これからも一緒に生きたい!ここに居るみんなはそうでしょう!?一緒に生きたくて、一緒になりたくてここに居るの!


 ___絶望はなにも変えない!何も変わらない!


 なら!動くしかない!………動かないと、後悔する。後悔して、苦しんで、自分を責める。



 その為に私達が出会ったわけじゃ、ない。

 一緒に笑顔で生きる為に、行動しよう!」




 「___ッ」







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