※元龍神と生贄はやっぱりチートです
「やめてください!私はッ、私はもう………こんなことをしたくない………!
サクリファイス皇族も龍神も、何も悪くないじゃないですか!貴方が悪なのです!だから、どうか………!」
コトは必死に捲し立てる。………最初は、この女が闇の聖杯を持っていたのだからこの女が主犯か、と思ったが、そうでは無いらしい。
実際、サタンはゴミを見るように泣き喚く娘を見下ろしていた。
【五月蝿い小娘だな………虫が我に何を意見している?お前は罪深い女さ、自分の兄の為にこの皇族を巻き込んだんだろう?
命令に刃向かったお前の兄など生き返らせはせぬ。………そうだな、一生この世界を滅ぼした女と不死にしてやろうか】
「…………ッ!そんな………それを呑みます!私は罪深い女でいいです!私の命を差し出します!なので、どうかもうやめてッ!」
【やめる?無駄さ。もう異形を世界に放った。この闇の聖杯に集まった闇の力でアンデッドは暴走している………可愛い龍神の卵達は沢山の命を奪っているさ。
それをお前の命1つで満足する?笑わせるな小娘!お前のような出来損ないの娘、誰も必要としてないさ!永遠に1人だ!】
「…………ッ、あぁ………っ!」
コトはその場で泣き崩れた。それを僕の隣で見たアドラオテルが黒い魔力を纏いながら結界を蹴り壊した。
「___アドラオテル!」
「お前が………ッ、お前がコトを傷つけたのか!
ダーインスレイヴ!」
アドラオテルがそう叫んで青紫色の剣を握り振り下ろそうとする。……が、サタンは一瞬でそれを躱して言う。
【ほう…………?その死にかけの分際で、我に刃向かうか。笑止千万、失せろ】
「っぐ!?」
「アド様ッ!」
「アドっ!」
アドラオテルは思いっきり蹴られて、先程よりも巨大になった闇の聖杯に叩き付けられ、拘束させられた。それだけで沢山の闇の魔力が吸われる。
「っ、ぁぁぁぁぁ! 」
「アド!………っ、やめろ!」
【やめろ?………雑魚の大天使の分際で何を言っている?この小僧はもう死にかけだ、我が手を下さずとも死ぬが、折角だから派手に殺してやろう】
「____殺す?誰が、誰を?」
【な____っぐふぅ!】
凛とした声が響き渡った。それと同時にサタンが拘束された。ミチミチと音を立てて拘束されるサタンの眼前には___いつの間にか、アルティアとラフェエルが居た。フェリクスは目を見開く。
『アルティア!ラフェエル!軽率に近づくな!アルティアは魔力を吸われているんだぞ!』
「____フェリクス、だっけ?あんた、リアムなんでしょう?だったらわかるじゃない」
アルティアはクスクスと笑いながら緑色の魔力を纏う。大きくなっていく丸い大きな魔力を背に、続けた。
「___私は、龍神として生まれた。
辛いことも、苦しいことも、あった。
悲しいことなんていつもいつも起きていた。
その元凶が目の前にいて____動けなくなる程柔い生き方をしていない。
ねえ、ラフェー」
「ああ。…………アル。自爆魔法はやめろ。私も居るんだからな」
ラフェエルはそう言って赤く染った剣を握り直す。それを見て、アルティアは笑った。
「自爆魔法なんて使わなくても、アンタが手を貸してくれるなら殺せるでしょう。
___サタン?だっけ?登場早々悪いけど………死んでもらうわよ。
超無属性魔法・"世界の終わり"」
「さらばだ、下劣なる堕ちた神よ。
武技___斬鉄剣」
【ふ、ふざけるな_____!】
2人の魔法と攻撃は見事に命中して、大きな爆発を起こした。消えていく黒い流砂を見ながら、アダムは呟いた。
「……………チートだ」




