隠された歴史のその先
未だに龍神の血を持つ家族達が黒い魔力を吸われている中、フェリクスと呼ばれた男は全員を見た。
『こんな大変な時にすまない。………どうやら、伝えるべき時が来たようだ。……我が子孫よ』
「リアム…………?」
『セオドア、私はリアムではない。………フェリクス・リヴ・レドルド・サクリファイス。初代皇帝さ』
「初代皇帝なんざ知らぬ!これはどういう状況だッ!」
『ラフェエル、焦るな。………奴は、サタン。50万年前、私とアマテラスが封印した魔王だ。………アダム、お前は知っているんじゃないか?』
フェリクスに話を振られると、全員の視線が僕に向く。語れ、ということなのだろう。
「…………この世界は神の世界でも忌み嫌われている世界だ。元々は全てボックス=ガーデンの世界だった。
しかし、100万年前、サタンがその世界を闇の力で征服を目論んだ。神々は怒り狂い、我が父・ゼウスと争った。しかし、サタンは沢山の神を喰らい、力を増幅させた。その反面人間や生き物を作り出した。
ゼウスは手に負えないとわかり、世界の半分をサタンに渡して………逃げたんだ。サタンは人間同士を争わせ、徒に命を生み出し、徒に殺させ………生きている、と」
『…………うん。アマテラスが言っていた通りだね。ここからが私達人間の話だ。
サクリファイス大帝国は地下にあったが、新しい武器を試したくて地上に出た………それは、嘘の伝承だ』
「なっ………!どういうことだ!?」
ラフェエルが憤ると、フェリクスは静かに語り出した。
『………我々サクリファイス大帝国はサタンを倒そうとした。サタンが我々の機械の技術に目を付けて、アンデッドで攻撃を仕掛けてきたんだ。
だからサタンに立ち向かった。その時にアマテラスと出会い………2人で手を取って、サタンを"最果ての孤島・ワールドヘヴン"に封印した。サタンを完全に消滅する事は出来ず、な。
それ故にまた封印が解かれても対抗出来るようにアマテラスの命をかけた禁術で私は生き続けたのだ』
「っ、それが今の状況とどう関係するんですか!?」
フェリクスの言葉に、セオドアが噛み付いた。しかしそれに答えたのは___誰でもない、サタンだった。
【龍神を作り出したのは___我だ】
「____!」
全員が言葉を失う中、サタンは恍惚な笑みを浮かべて言う。
【封印をされたとはいえ死んでいない。そしてこの世界にいるのは無能な妖精神や神、精霊だけだ。愉しかったさ、沢山の人間が殺し合う中、その魂を操るのは………初代龍神を生み出し、更なる混沌を生み出したはずだった。
なのに………その小娘が、このサクリファイス大帝国がまたもや邪魔をした】
サタンはギロリ、と苦しむアルティアと睨み付けるラフェエルを睨んだ。しかし、口元は醜く歪んでいる。
【龍神はいなくなってしまった。死ぬ魂も減ってしまった。つまらん、つまらん。………だから、逆に利用してやろうと決めたのさ!
『大きな願い』を持つコトの魂を異世界から呼び我が子とし、その闇の聖杯で沢山の魂を喰らってきた龍神の力を奪い、この世界を混沌に落とす為になぁぁぁぁ!】
「お父様!やめて!」
そう高らかに笑うサタンに、コトは怒鳴った。サタンと同じ柘榴色の瞳からポロポロと涙を流しながら、大きな声を出した。