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神の子は悶々とする

 




 女に引っ張られ、大木の下で話をした。

 女はとても聞き上手で、最初こそドギマギしてたけど、次第に色んな話をした。



 この女はこの異世界『ユートピア』で『サクリファイス大帝国』の皇女らしい。



 要するにお姫様なのだが、ほんわかした見た目とは裏腹にとても知的だった。正直、ラウと話すより楽しく話せた。



 話していくうちに様々なことがどうでもよくなっていく。神よりも神っぽい女の言葉は時間を忘れさせた。





 * * *




「セラフィールー!どこだー!」




「セラフィール様ー!どこにいらっしゃるのですかー!」





 遠くから、男の声がした。

 どうやら従者が来たらしい。今気づいたけれど、空がオレンジ色だ。


 女はそれを聞いて、立ち上がった。


「わたくし、もう行かなければ」



「………あぁ」




 そんな間の抜けた返事しか出来なかった。だって、まだ話したいから。けれど名前すら知らない人間の女を引き止める理由なんて思いつかない。女がお姫様なのであれば、従者が呼びに来るのは当たり前なのだ。



 そう分かっていても気が沈む僕に、女は眉を下げながら言った。




「………そのような悲しそうな顔をしないでくださいまし」



「………そんな顔、してない」


 アダムはそう言って口を尖らせる。

 どうみたって年下の女にこんなことを言われるのは甚だ心外だ。僕は神なのだ。人間に感情を悟られたくない。


 しかし女は再び口を開いた。



「そうですか?今にも泣きそうな顔、してますよ」




「!?」




 僕は慌てて泉を見た。そんな顔をしているなんて恥ずかしい。そして嫌だ。けれど映っているのは赤くなった自分の顔だった。頭上からクスクスと控えめな笑い声が聞こえる。



 「嘘です」



 嘘…………?

 僕は嘘が嫌いだ。女を睨みつけた。



「………僕を侮辱してるの?僕は王族だぞ」




「怒らないで下さいまし。冗談です。


 お立ち下さいまし」





 女そう言いながらも顔を緩めて僕の手を取った。そして、引っ張って立たせてきた。


 小さな女の両手が僕の手包み込んできた。




「お名前、教えてくださいまし」



「………アダム、アダム=ブロセリアンド=ガーデン」




 気づいたら、名乗っていた。

 名前を教える必要がないと言うのに、僕の口は僕の言うことを聞かないらしい。



 しかし、そんなことを知らないであろう女は嬉しそうに笑った。



「アダム様ですね、わたくしはセラフィール・リヴ・レドルド・サクリファイスでございます。


 わたくしは4日に1回、此処に参ります。宜しければ、またいらっしゃってください。


 ………また、会いましょう。アダム様」






 女___セラフィールはそれだけ言って背を向け、声のする方へ向かって走っていった。



 …………なんだ?あの女は。

 初めて会った僕の名前なんて聞いてきて。よく分からないであろう僕の名前を聞いてきて。



 けど。



 「____4日後、どう抜け出そうか」




 アダムはそう呟いて、草むらに身を預けた。





 * * *



 ……………セラフィール。

 セラフィールはあの場所を『運命の場所』だと言っていた。


 アマテラスのことを知らないと言ってたのに、何故『運命の場所』と言ったのだろう。


 そもそも、何故セラフィールはあそこにいた?あの羽根はなんだ?


 セラフィール____「アダム様」



 そんなことを考えていると、部屋にいたラウが話しかけてきた。











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