ご対面
「そんな顔はしていない。それはお前だろう」
「私はお前じゃなくてシエルです!貴方の名前は!?」
「名乗る必要性を感じない」
「兄弟になるじゃないですか~、このこのぅ♪」
「…………」
なんだ、この軽薄なノリは?さっきのカチコチが嘘のようだ。このタイプの女は面倒臭い。無視が一番だな。
「名乗ってくださいよ!我がブラザー!」
「………」
「お願い!」
「…………」
「ワンチ___「シエル」ひえっ!」
「!」
そんな話?をしていると女が真っ赤になった。後ろには___紫銀の長髪、黄金がかった緑瞳の美しい子供が抱き締めた。
子供は顔を赤らめるシエルに言う。
「………僕が居るのに、他の男を口説いている?シエルは悪い子?」
「あ、う…………そ、そんなつもりじゃ………」
先程の騒がしさはどこへやら、茹でダコのように顔を赤らめて縮こまる。子供はふ、と笑ってから僕の前で綺麗にお辞儀をした。
「____初めまして、アダムお兄様。
お姉様の弟、フィアラセル・リヴ・レドルド・サクリファイスと言います」
「……なぜ、名前を知っている?」
「お姉様から聞いたからです。…………よろしくお願いします、アダムお兄様」
子供は控えめに笑みを浮かべる。
きっとこの笑顔を見た人間は心を奪われるのであろう。比喩ではない。美しさも去ることながら人を惹き付ける膨大な魔力を纏っている。無意識か意識的かわからないが、催淫の魔法を感じる。
とはいえ、僕はこれでも神だ。そんなものは通用しない。
「…………アダムだ。よろしく」
「ええ、………彼女の紹介はするべき?」
「いや、結構。もうされた」
「ならいいです」
「それよりも、セラは___「アダム様」………セラ」
そんな会話をしていると、セラフィールが現れた。紅銀のドレスを纏い、いつもしていない化粧をしている。……間違いなくシエルよりも美しい女。
「………セラ、綺麗だ」
「そ、そんなこと………!そ、それより!フィア、彼女が貴方の……?」
そんな言葉だけで赤くなるセラフィールは思わず話題を逸らす。セラフィールの言葉にフィアラセルは小さく頷いた。
「彼女、シエル。僕の婚約者」
「は、はわぁぁぁ……美女が降臨なされた………流石フィア様のお姉様………目がぁぁぁ、目がぁぁぁ!」
「…………」
シエルは僕が日本に居た時に聞いたことがあるようなネタを口走ってる。………もしかして、僕と同じ異世界転生者?セラフィールの父親も日本人っぽいし、異世界転生者が集まりやすい血筋なのかもしれないな。
そう結論付くのと同時に、コンコン、とノック音が響いて………銀髪のベリーベリーショートヘアの金と赤のオッドアイの男が現れた。
「___準備が出来ました。それぞれの想い人を連れ、玉座の間へ謁見願います」
「ええ、ガロ。………フィア、アダム様、シエル様、参りましょう」
「うん。シエル、行くよ」
「…………ああ」
「ひっ、は、はぁい………」
4人はガロに案内されて、玉座の間へ向かった。
* * *
サクリファイス皇城、玉座の間。
どの部屋よりも豪奢絢爛で、歴史のある部屋だ。そこに4人の男女が、目の前で膝を着く4人の男女を見下ろしていた。
女帝・アミィールは静かに口を開いた。
「全員、頭を上げなさい」
その言葉に、アダムはすぐに頭を上げた。目の前にはセラフィールと同じ紅銀の長髪、黄金の瞳の豪奢な女と、群青色の髪、セラフィールと同じ緑の瞳の男、紅銀の短髪、自分と同じ紅い瞳の男、昨日会った黒髪黄金の瞳の女、アドラオテルが居る。
並の人間であれば、この錚々たる顔ぶれに怖気づくのだろう。現に、フィアラセルの隣にいるシエルは未だに顔を上げていない。しかし、アダムは違った。冷静に一人一人を見ていた。
………あの1番偉そうな女は母親だな。その隣が噂の父親、その後ろは祖父母、そしてアドラオテルか。全員難しい顔をしている。
アミィールは鋭い目付きでアダムに問うた。