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殴られる覚悟をする神の子

 




 「一応殴られる準備はしとけ。父ちゃんもだけど、母ちゃんもじいちゃんも殴ると思うからな。


 あ、俺が殴って鍛えとく?」



 「いや、いい。神はどんなに殴られようと死なないからな」



 「ちぇっ、つまんないの。それより、服はどうにかするぞ。


 俺の服を貸して……いや、父ちゃんが作った服だからな~、最初に着てたロープ着とけよ。


 んじゃあなぁ」



 アドラオテルはそれだけ言って部屋を出ていった。アダムとセラフィールは2人になる。



 それを見計らって、セラフィールは口を開いた。




 「………改めて申し訳ございません、アダム様。


 わたくしは馬鹿です………」



 「それはもういいって言っただろ?」


 「きゃっ」



 アダムはセラフィールの腕を引き、自分の胸の中に誘う。そして、優しく触れた。



 「セラフィールが僕の存在をちゃんと家族に言ってくれたんだ、それだけで嬉しい」



 「………ですが」




 「次は僕が、セラフィールの大事な家族に挨拶をする。……それで、認めてもらうんだ。何年かけてでも認めさせる。


 それで………ずっと一緒だ」



 「………!はい、アダム様」



 セラフィールはそれを聞いて幸せそうに笑った。それを見たアダムは同じく笑みを浮かべてキスをする。




 ____この時の僕は、忘れていたんだ。

 父親・ゼウスが言った言葉。



『愛する女は死ぬ』。幸せすぎて忘れていたその言葉を思い出すまであと10時間。






 * * *








 「……………」




 アダムはいつものロープを纏って、ある一室に居た。セラフィールは謁見する為にドレスを着ている間は待合室のような部屋に居るように、と金髪茶瞳の燕尾服の男に連れてこられたのだ。今も部屋の隅に居るけど整った顔で険しい表情を作ってる。



 …………それはそうだよな、と思った。

 セラフィールに常々家族のことを聞いていた。セラフィールを含む子供達は大事に、それこそ宝のように大事に育てられてきた。それを横からかっ攫うどころか手を出したのだから。殴られる準備は出来ていたけど自覚は足りなかったようだ。



 とはいえ、ここで引くつもりはない。引くなんて道、最初からなかった。



 セラフィールと共に生きる為に神を捨てた。後悔もない。………初めて、自分で選んで行動したのだから、寧ろ誇らしいくらいだ。どんなことを言われても譲らない。必要であれば頭を垂れる。



 全てはセラフィールの為に………?




 そんなことを思っていると、ガチャ、と部屋が開いた。セラフィールか?と思ったが………違った。



 「し、失礼しまぁす?」



 黒と白のごまプリン頭の短髪。男か?と思ったけれど、身体が女だ。白いワンピースを着ている。………物珍しい格好も去ることながら、目を引いたのは溢れ出ている聖の魔力だ。神か?と思ってしまうくらい清らかな力の波動を感じる。




 しかし女は自覚がないのか、カチコチに固まりながらロボットのように動いて、下を向いた。見たところ16歳くらいか?というか、何故この部屋にこの女が………?




 そんなことを思っていると執事が部屋を出た。………人間の魂が1つと人ならざる者の魂が1つ、ドアの外にある。見張りはいなくなったわけじゃないらしい。セラフィールはまだか「あの!」……?



 不意に声をかけられた。

 真っ赤な顔の女が僕を見ている。



 「………なんだ?」



 「あ、あの、ここに居る、という事は……その、フィア様のお姉様の彼氏ですか!?」



 「それがどうした」



 「あ、いや、なんでも………ただ無言がキツくて……」



 どんどん小さくなる声。………フィア様、ってさっき言ってた10歳の弟のフィアラセルという者の婚約者か?年の差がエグイな。………身内になるのなら、話してみるか。



 「………無言がキツイのなら退席すればいいだろう」


 「い、いやいやいや!私は!フィア様と生きるんで!避けては通れないというか!


 そっちこそ気難しい顔をするなら帰れば!?」











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