繋がる想い
思わずセラフィールは露になった胸を隠そうとするが、素早いアダムの手がセラフィールの手を掴み阻む。
裸を見られて恥ずかしいセラフィールは顔を真っ赤にして、アダムを睨んだ。
アダムは、その無愛想な顔に珍しく笑みを浮かべ、いった。
「………君は、化け物じゃない。
今の君は___ちゃんと人間の女の顔と身体だ」
「…………っ、わたくし、は」
「セラは化け物なんかじゃない。どんなに嫌がったってそれは変わらない。セラはセラだ。
そして、僕が愛したのもまた、セラなんだよ?」
「な…………ッん!」
セラフィールが何かを言う前に、アダムは唇を重ねた。涙に濡れたセラフィールの瞳が見開かれていく。
17年生きて、初めてのキス。
全部唐突で、全部理解出来なくて、………なのに、心地好くて。
____アダム様は、わたくしを慕ってくれていると言うの?
___でも、アダム様は神様で、わたくしは化け物で。
でも。
『セラは女だよ』………そう言ってくれているような、キスで。
わたくしは____やっぱり、この御方と居たい。
この御方が好きだ。
そう思いながら、目を閉じた。
銀色の髪と紅銀色の髪が妙に赤い満月の光を乗せて、2人はキスをしていた。
* * *
「____ねえ、アダム様」
ベッドの上で未だに裸のセラフィールはぽつり、愛おしい男の名前を呼んだ。同じく裸のアダムはそんなセラフィールを愛おしげに見ながら、気だるい身体を起こした。
「………なんだ?」
「アダム様はわたくしを攫う、と言ってくださいました。………けれど、わたくしは………この城が好きです」
「………ああ」
「国民も、国も、………愛しております。アダム様と2人で生きたい気持ちが無いわけではございません。
けれど、………この城を捨てることは……」
セラフィールはそこまで言って、ぎゅう、とアダムを抱き締めた。
そんな愛らしい仕草をしながら、それでも涙を溜めているセラフィールにときめく。
…………本当はこんなに関係を急ぐ気はなかった。2人で逃げ出して、2人で山奥にでも住んでから……と考えたけれど、セラフィールがこの国をどれだけ愛しているかを常日頃から聞いていたから、こういうんじゃないか、って心のどこかで思ってた。だから関係を結んだんだ。
____きっと、『破戒の女神』・アマテラスもこう可愛く強請られたんじゃないかな。
じゃないと、逃げ出した神が皇族になんてならなかっただろうし。
そこまで考えてふ、と笑みを浮かべてセラフィールの額にキスをした。
「…………わかった。僕は君と生きる為に神を捨てたんだ。
君の選んだ道と共に、在り続ける」
「………!アダム様………ありがとう、ございます」
ふわり、と浮かんだ笑み。こんな可愛い顔に欲情しない男など居ないんじゃないか?神だって敵いはしない。
「………セラ」
「?アダムさ………っあ」
アダムはセラフィールの身体に触れる。甘い吐息と熱烈な視線を受けながら、口角を上げた。
「___会えなかった分、もっと愛したいんだけど」
「………っ、う………アダム様は破廉恥です………!」
「そんな可愛い顔をする方が悪い」
「んっ」
涙目で苺のように顔を赤らめるセラフィールに唇を重ねた。
…………もう、絶対離さない。
セラフィールは、俺だけの天使だ。
傲慢で結構。自分勝手で結構。
____仕方ないだろう?神なんだから。
神を捨てた男はそんなことを思いながら、天使を夜通しで穢したのだった。