重なる逢瀬
「アダム様、お待たせしました」
「やあ、セラ」
月日はまた流れ、もう出会って10年が経っていた。僕は19歳、セラフィールは17歳だ。
歳を重ねていくにつれて、幼かったセラフィールは一段と美しくなったけれど、ほわほわとした雰囲気は変わらない。
けれど、皇女というのは中々大変で、この逢瀬の場所で執務をしながら待っていることが多くなった。
アダムはセラフィールの持っている書類を覗き込む。
「今日は何をしているんだ?」
「孤児院の経費です。ナナちゃんが保母さんになったのですが、お金の計算が苦手でわたくしが代わりにやっています」
「ふぅん。そんなの自分でやらせればいいのに」
「いいえ、人間には得手不得手があります。わたくしは計算が好きなので、やらせて頂いているのです」
そう言ってにこにこしながら沢山の書類をやっているセラフィールはとても偉いと思う。僕だったらやらない。現に、今も父上の仕事の手伝いをすっぽかした。神々の会議などつまらない。
そんなことを思いながら、セラフィールに言う。
「……少しぐらい手伝ってあげる。半分貸しなよ」
「え、でも…………」
「今更遠慮とかいいよ。二人でやった方が早いだろう?」
「…………はい、では、お願いします」
セラフィールはそう言って目を伏せて微笑んだ。……僕はどうやら、相当重症で………この笑顔を見たい為だけに人間の仕事を手伝っている。
____願わくば、セラフィールだけの神になりたいな。
そんなことを思いながら、二人で肩を並べて執務をしていたのだった。
* * *
ボックス=ガーデン、ブロセリアンド王城の玉座の間にアダムは呼ばれた。礼儀を尽くさず、目の前の男を睨みつけていた。
目の前には___銀色の神に、銀色の髭。紅い瞳の父親・ゼウス=ブロセリアンド=ガーデンが自分の髭を撫で付けながら言う。
「……………アダムよ。そなたは何故神々の会議をすっぽかした?」
「…………忘れてました」
「あの会議はお前の力を持つ子を産む女を選ぶ会議だったんだぞ」
「…………」
____だから出なかったのが何故わからないんだ。
アダムは心の中でそう毒づく。神が交配するのがもう人間臭い。
大体、僕はセラフィールがずっと昔から愛しているんだ。セラフィール以外の女に興味などない。
「そもそも、お主はもう子供ではないのだ。城を抜け出し何をしている?」
「読書や瞑想をしております。それに今それは関係ないことかと」
「………よからぬ事をしているという噂があるぞ。私はお前の能力を高く評価しているが、不遜な事をするというなら消滅させるぞ」
「…………」
そう言って神々しいオーラを出している。こうして脅してくるのだから、全知全能の神というのも、しょうもない存在だと思ってしまう。
アダムははあ、と大きく溜息をついた。
「肝に銘じておきます。では」
「こら!アダム!」
アダムは最後まで話を聞かず、玉座の間を出た。疲れた………甘いミルクが飲みたいな。
そんなことを思うアダムを見る女。
女は___ぎり、と歯ぎしりをした。