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天使の姉弟

 





 「りんご飴も綿菓子も美味しいな」



 そう言っているアダムの手には沢山の甘味がある。セラフィールはそれを見て微笑んだ。


 アダム様はこう見えて甘いのが大好物なのです。私が作る菓子も食べてくれますし、今も笑顔です。見ているわたくしも笑顔になってしまう。


 楽しい、楽しい花火大会。まだ花火は上がっていないけれど、大好きな街をアダム様と歩くのだけで満足してしまいそうになる。



 けれど………肝心なことが未だにわかりません。


 ____わたくしが、アダム様を愛しているのかということ。


 それを知るために誘ったのが大きな目的です。確かに、普段より長く色々なものを見たり聞いたりして楽しいですが、この気持ちが『好き』だと言うものか、イマイチ分からないのです。



 「…………?セラ、どうした?」


 「いえ、なんでも___「ん?セラじゃん」………」



 不意に、別の男の声がした。アダム様ではないけれど、よーく知っている声。だから逃げ出そうとしたけれど……その前に腕を掴まれた。


 見ると………やっぱり、アドラオテルだった。




 * * *



 「……………」



 共に祭りを歩いていると、群青色の髪、紅と黄金の瞳の男がセラフィールの腕を掴んでいた。



 ……勿論、あまりいい気がしない。

 セラフィールに自分以外の男が触れているのは、嫌だ。


 そう思ったアダムは、セラフィールを掴む手を強めに払った。



 「…………君、何?セラに軽々しく触れるな」



 「あ、アダム様………?」



 「あだむ………ああ!セラの男か!」



 「は?」



 男はセラフィールから手を離し、拳を作って掌に当てた。セラの男…………?


 戸惑うアダムに、男はニヤニヤといやらしく笑いながら言う。



 「いやぁ、噂のアダムは中々の美形じゃないか~。しかもセラにゾッコン?青春じゃ~ん、セラ~」



 「っ、アド!黙ってくださいまし!」



 「セラ、コイツは………?」



 顔を赤くしてギャン、と吠えるセラフィールに聞く。しかし答えたのはセラフィールではなく男だった。



 「俺はアドさ、アドラオテル。セラとは双子なんだッ!だからそんなに睨まないでよ~」



 「双子………」



 「それよりアド!何をなさっているのですか!?……」



 アダムは改めて未だに真っ赤になって怒るセラフィールとそれに答えているアドラオテルを見る。似て無さすぎだと思うが、確かに冷静に見て紅い瞳はアマテラスの瞳の色と一致する。



 そんなことを思うアダムにぽい、と効果音がつきそうな勢いでアドラオテルはセラフィールを渡した。



 「とにかく、俺も女の子とデート中だからお前に構っている暇はないんだよ。


 ってーことでアダムくんまったね~」



 アドラオテルはそれだけ言って狐の仮面の女を連れて人混みに消えた。呆然としているアダムにセラフィールは申し訳なさげにする。



 「申し訳ございません、アダム様………わたくしの弟が…………不快な想いをさせてしまい……」



 「別にいいよ、気にしていない。それより、双子の割には似てないな」



 「ええ。わたくしはあの滅茶苦茶な弟のようにはなりたくありませんので。だから___!?」



 「!?」


 セラフィールは突然僕の腕を引っ張った。そして、力任せに引っ張ってくる。何が何だか分からず問うた。




 「ど、どうした?セラ」



 「お、お母様とお父様、弟を見つけたのです!ごめんなさい!



 わたくしと一緒に逃げてくださいまし!」



 セラフィールはそう言って肩を揺らした。……前、セラフィールが言っていた。『お父様は殿方と一緒に居るだけで泣く』と。



 「きゃっ………!」



 それを思い出したアダムはパチン、と指を鳴らした。すると、いつもの逢瀬の場所に戻ってきた。



 セラフィールはパチパチと瞬きをしてアダムを見た。








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