好き #とは
ナナちゃんとビスカリア様はキャイキャイと話し始める。過激な話についていけなくて、わたくしは再び机に突っ伏した。
* * *
「セラ、顔が真っ赤だけど、大丈夫かい?」
「は、はい………」
孤児院の帰りの馬車にて、群青色の短髪、緑色の瞳の父親、セオドア・リヴ・ライド・サクリファイスが心配そうに声をかけた。
その横に座る群青色の髪、紅と黄金の瞳の双子の弟、アドラオテル・リヴ・レドルド・サクリファイスはにやにやしている。
「なになに~?恋煩い?」
「そ、そうではなく!全く!そんなことはありません!」
慌てて否定した。アドラオテルは意地が悪い。そして鋭すぎるのです。目の前に座るお父様がとても怪訝な顔になっています………う、うう、話題を変えたい………で、ですが、気になることもあるのです。
「こ、恋といえば!お父様はどんな時にお母様のことを好きになったのですか?」
「え?」
「わたくしは、その、年頃の娘で、恋に疎くてきょ、興味!興味があるのです!」
「………」
わたくしがそう聞くと、お父様は険しい顔をした。わたくしがこういう話に興味を持つと昔から少しだけ不機嫌になるのです。お父様は過保護なのです。
けれども、本当に興味があるし、アダム様に抱く気持ちが『愛している』というものであれば、……し、知らなくてはならないのです!
セラフィールは自分に自分を言い聞かせて、顔をさらに赤らめるが、それでもセオドアを見た。不審だけれど、真剣な瞳に、セオドアは小さく溜息をついた。
「………私は、アミィと毎日共に居て、様々な事をして、城にもあるあの『運命の場所』で、『この人と生きたい』と思った。
大きなきっかけは勿論あったけど、いつ好きになったかはわからないかな?気づいたらアミィを目で追っていたから」
「そう、なのですか…………」
お父様とお母様の出会いは知っています。幼少期にみんなでお父様とお母様の劇をやりましたし、その劇を知らない国民は居ないと言っても過言ではないくらい有名になりました。
小説のように、辛いことを共に乗り越えたり、なにかを共にしたりしなくとも、好きになることはあるのでしょうか…………「それで」………?
考えていると、お父様の声がした。
見ると___眼前に、お父様の顔があった。
「………どの子が好きなんだ?」
「へ?」
「今この話をするということは孤児院の子か?セラと仲良くしている男子はターくん、チョウくん、サイスくんだよね?
ハッ!もしかしてロトくんやティーダ様ではないだろうな!?セラ!どうなんだ!」
「へ?へ?へ?」
お父様は目をギラギラさせて聞いてくる。わたくしは戸惑うことしか出来ない。
そんなセラフィールに、アドラオテルは言う。
「あーあ、セラはお馬鹿だなぁ。父ちゃんの面倒くさいスイッチ押しちゃうなんて。
俺は助けないぞ~?」
「セラ!パパに教えなさい!どの男の子を慕っているんだ!?もしかして従者の中に………」
「………………えっと………」
…………この後もセオドアはセラフィールにしつこく聞いた。
セラフィールはそんな過保護な父親の問いに困った笑みを浮かべて『そんな人おりません』と弁解するしかなかった。