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天使は鈍感

 



 リンドブルム孤児院。

 それは、サクリファイス皇族が親のいない子供達を育てる為に作った施設だ。わたくしは小さな頃からお父様に連れてきてもらい、ここで遊んだり勉強をしたりしてきた。大事な場所だ。



 「そして、わたくしはナナちゃんに会いにリンドブルム孤児院を訪れたのです」



 そうにこやかに言うビスカリア___ビスカリア・ラピュード・ヴァリアースは、隣国のヴァリアース大国の王女である。彼女もわたくしの友達だ。3人でよく大会に出たりするくらい仲良しで、こうして3人で話すことがよくある。



 「で、アダムって誰よ?」



 「へ?」



 「アダムとは誰なのかと聞いているのです」



 険しい顔をするナナと、ニコニコするビスカリア。セラフィールは自分の口を塞ぐが時すでに遅し。


 「…………セラ、大親友である私に話すわよね?」



 「セラ様、未来の妹のわたくしに言えないことなどないですわよね?」



 「…………ひぅ」




 じりじりと挟み撃ちをするように距離を詰める親友2人に、セラフィールは涙目でカタカタと震えたのだった。




 * * *





 ___1時間後。


 「ほほ~?秘密の逢瀬ねえ?」


 「おまけにその相手が神ですって。聞きました?ナナ様」



 「聞いたわ~、とってもロマンチックじゃな~い♪」



 「ううっ………」




 にやにやといやらしい笑みを浮かべるナナとビスカリアに、セラフィールは机に突っ伏して泣いていた。



 ………喋ってしまった………

 前にアダム様と『僕とセラだけの秘密だ』と言われたのに………こちょこちょするのはずるいです………



 グズグズと泣いているセラフィールを他所に、ナナは口を開いた。



 「いーじゃないの、そんなに泣かなくたって。ナナたちに隠し事をするほど好きなんでしょう?」



 「す、好きですけど………」



 「ティーダ様やセフィロトが入る隙間なんてもうないくらい盲目的にその神の子が好きなんですよね?」



 「も、盲目的なんて!その表現ではわたくしがアダム様をお慕いしているみたいじゃないですか!


 そ、そんな恐れ多いこと………」



 「え」



 「え」




 「?」




 セラフィールの言葉に、ナナとビスカリアは固まる。なぜだか分からず首をかしげてしまう。そんなセラフィールを放ってナナとビスカリアはこそこそ話した。




 「ビスカ、あの言い方、ちょっと問題じゃない?」


 「ええ、大問題ですわ。………昔から何故セラ様はあんなに鈍いのでしょう………


 いつもわざわざその場所に足を運び共に遊んで、泣いていたら抱き締めるなんて明らかに好意的ですのに………」



 「そうよね、ナナもそう思うわ。神ってそもそも人間と会話したがらないのよ?それでも話していて、なおかつブロセリアンドと言ったら神の世界では王族よ?


 そんなのもう『愛してる』じゃないと会わないじゃない………」



 ナナはそう言って頭を抱える。

 ………ナナという少女は、30万年前から転生を繰り返している魔女で、知らないことなどほとんどないのだ。それを知らないビスカリアは首を傾げながらも言う。



 「と、とにかく、自覚くらいさせてあげた方がいい気がします………自分で気づくのが1番いい事ですが、セラ様に関しては別です。セラ様は一生言われないと分からないでしょう」



 「筋金入りのニブチンだからね……仕方ないわ、ナナ達で少しくらい意識させてあげましょう………」



 「………?」



 セラフィールは未だに首を傾げている。ナナちゃんとビスカリア様が何か話しております。やはり、神の子など信じて貰えないでしょうか………わたくしだって未だに半信半疑なのに………



 「………セラ」



 「は、はい!」


  突然名前を呼ばれて、背筋を伸ばす。

 ナナはあからさまに作り笑顔で問うた。


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