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1 キャンペーンに引っかかりました

以前投稿してたのをいじりました

「おめでとうございます、久道小達くどうこたつさん。この度あなたは異世界びっくり転生キャンペーンに当選いたしました」


 ……何言ってんのこの人……。

 そんなこと急に言われましてもえぇ……てなるだけなんですけど。


 今俺の目の前には女神っぽい雰囲気の女神っぽい人がいた。

 綺麗な白い長髪に、ロリっぽいジト目。

 祝ってくれている割にはめっちゃ真顔だ。


「すごい運がいいですね」


 これまた真顔で彼女は言い放つ。


「あ、はい、どうも…………って、ならないですからね。失礼ですけど誰なんですか? あなたは」


「私は女神ですよ。見た感じで察してください」


「いや、確かにすごい女神っぽいなとは思いましたけど……全然状況が分かんないです」


「だから異世界びっくり転生キャンペーンに――」


 ――当選したのは分かってるんだよ! そのキャンペーンが何か知りたいんですけど。


「それに当選したらどうなるんですか? というかここはどこなんです?」


「ここは天国。あなたは特別にここにいます」


「天国? え、俺って死んだの?」


「そうですよ」


 軽いノリで言ってくれるが全然実感湧かないなぁ。

 確かに周りは白い雲だらけで天国感はあるけども。


「うーんと待てよ、つまり俺は地球で死んでしまったんだけど、そのキャンペーンとやらに当たったからこの天国に呼ばれたと、そういうわけか」


「やっと分かりましたか。ちょっと無能ですね」


「にしてもどうして僕は死んじゃったんですか? 何か僕の身にあったんですか?」


 まだいまいち状況を呑み込めないながらも、とりあえず質問する。


「知りませんよ。自分で考えてください」


 えぇ……。すげえ仕事適当じゃねこの女神。敬語で対応するのがバカバカしくなってきた。


 しかしそう言われても特に何も心当たりがない。

 思い出せることとすれば、登校途中、割とデカめの犬の糞を靴の裏に思いっきりめり込ませてしまったことくらいだ。

 うーん、まぁ今更死んでしまったものをグダグダ考えても仕方ないのか……?

 折角地元の高校に入学して、これからエンジョイライフを満喫しようと思っていたところだったのになぁ……。


「えっと、それで俺はどうなるんだ?」


「はい。簡単に言えば、ウルトラブーストをかけて異世界に転生していただける権利をあなたは得ました。もっと喜んでもいいんですよ。未成年で死亡した方々の中から0,001パーセントの確立を経て当選したんですから」


 へー、何か知らないけどそれはすごい。

 えーとその確立だと……十万人に一人とかになるのか。そう考えると運がいいのかもと思えてこなくもない。

 ていうか転生? 生き返れるのか俺。


「では転生時の能力を決めてください」


「ちょ、ちょっと待て。転生ってどういうことだ?」


「察しの悪い人ですね。さっきから言ってるでしょう。耳が腐ってるんですか? ファンタジーな異世界に転生できるんですよ。もちろん拒否もできますが」


「転生ってこの姿のまま?」


「そこは自由に選べます。0才の赤ちゃんからスタートしてもいいですけど、そっちを選ぶ人はほとんどいませんね」


「うーん。まあ俺も赤ちゃんはちょっと……」


「そうですか。それでは能力を決めてください」


「能力……って、さっき言ってたウルトラブーストとかいうやつか?」


「そうです」


 ……そうですって言われてもよく分からんな。

 さっきからちょいちょい説明不足すぎるんだよ。

 とはいえあんまりオーム返しに尋ね返しまくるのも何か悪いし……ってそんなこと言ってる場合じゃない。


「えっと、なら他の人はどんな能力を選んだんだ?」


 いまいちイメージが湧かなかったため、とりあえずそんなことを聞いてみた。


「それは規約上お教えすることができませんね。ただ例外なくかなりハチャメチャな能力を選ばれてました、とだけ」


「能力、か。運動神経がめっちゃ良くなるとかそんな感じ?」


「そんなつまらない能力ではないですが、まあ大体そんな感じです」


 む。つまらなくはないだろ、別に。


 しかし能力か。

 ファンタジーの世界らしいし、危険もありそうだな。

 その辺りも女神様に聞いてみると、普通に魔法やら魔物やらが出るらしい。


「えー。危険なの嫌なんですけど。他の世界はないのか? あれ? というか元の地球に転生しなおすってのはダメなのか?」


「こちらのキャンペーンは特定の異世界しか無理です。よって元の世界も無理です」


 きっぱり言われた。

 マジかー。


「わざわざ危険な所に転生したくないかも……」


「どんだけ危険なの嫌なんですか。女子なんですか? 普通異世界転生って言ったら皆やっほーいって飛びつきますよ」


「そういうものなのかね……」


「そうですよ。確かに危険はあるかもしれませんが、場所を選べばそうでもないですよ。それにあなたが元いた地球とは違ったものがたくさんあって新鮮だと思いますけど。何だったら戦闘系の能力にすればいいじゃないですか。一応人気ですけど。ていうか早く決めてください」


 女神様に諭されて、確かに未知の場所という意味ではワクワクしなくもないとも思えてきた。

 でもやっぱ激しいのって俺の性に合ってない気がするんだよな。のんびりするの好きだし。


「うーんそうだなあ……相談なんだけど、平和に生活できるような能力とかってないか。できれば楽しめる感じのやつで」


「はぁ、結局人任せですか。つまらない人なんですね」


 凄い毒舌を吐かれているが、それも致し方ないのかもしれない。そもそも転生にそんな乗り気じゃないのだ。


「じゃあ、私の独断で決めちゃってもいいですか? その場合面倒なのでランダムになります」


「ランダムはふざけてるだろ。しかも決めてるって言わないよねそれ。せめてマシな能力にして欲しいんですけど」


「いや、何かもう絡むのが面倒になってきました。適当な場所に適当な能力で転生させるので後は頑張ってください」


 女神がそう言うや否や周囲が段々と強い光に包まれていった。

 え? マジでこのまま終わらせるつもりなの? 


「はぁ、ほんとうざい人でした。恨むなら自分の不甲斐なさを恨んでくださいね」


 どうやらコイツは本気らしい。

 まじかよ流石に冗談だと思いたかったわ、職務怠慢にもほどがあるだろ……!



 ――はぁ、まぁ、もういいかなんだって……



 かくゆう俺もなんかもう面倒くさくなってきた。

 どうせ死ぬはずだったわけだし、当選しただけで儲けものというものだ。

 能力もランダムってことで、逆に何を引くか楽しみがあっていいじゃないか。

 うん、そういうことにしておこう。


「それでは精々頑張ってください。応援はしませんが――」


 意識が薄れる寸前まで女神は何か言っていた。

 こんなのが女神で本当に大丈夫なのか?

 ……まあもういいや、折角転生させてくれるということだし、ボーナスタイムだと思って適当に生きよう。



 それに……こんな奴の顔なんて、もう二度と見たくないしな。



 そうしているうちに、だんだんと前の前が光り出す。


 そしてゆっくりと俺の意識は消えていった。





 ○





 ゆっくりと目を開ける。

 視界に飛び込んできたのは……疎らな木々が立ち並ぶ森だった。


 一瞬パニックになりかける俺だったが、すぐに思い出す。


「あ、そういや転生したんだっけ」


 そよ風が頬を撫で、後ろへと抜けていく。

 空は晴れ渡っており、気分も心なしか清々しかった。


「はぁ、本当に適当な場所なんだな」


 

 俺はやれやれと思いながらも、何とはなしに視線を横へと向けた。




「…………」




 そこには呆然と佇むさっきの女神様がいた。


 何が起きてるの? とでも言いたげに目を見開き、ただ立ち尽くしている。


 そしてしばしの沈黙の後、彼女はようやく口を開いた。







「…………え?」







 そうして女神と始める俺のとんでも異世界ライフが幕を開けたのだった。



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