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推しを買っちゃった♪  作者: 速水美羽
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8話

※奴隷の話で不快になるかもしれません。


 よし!かかったな!!


「秘書……?は?お前奴隷の使い方間違ってないか?」


「いいえ!間違ってはないわ!!」


「私が今知っているだけでも奴隷の使われ方は大雑把に分けて三つ程あるのよ。」


 私は指を1本ずつ上げて理由を述べる。


「一つが借金を抱えている奴隷。これは破産した人が借金を返すまでの期間が設けられている奴隷ね。」


「二つ目は子どもの奴隷。多くは貧困を理由に親が子どもを売ることで奴隷になるわね。たまに人拐いによって売られる事もあるわ。」


「三つ目は犯罪奴隷。文字の通り小さい犯罪から大きな犯罪まで死刑囚以外は大体肉体労働。犯罪が情状酌量の余地がある場合は労働の期間を設けられて解放される事が多い。」


 二つ目の子どもの奴隷の場合。買われた値段を返せれば解放される仕組みになっているが、これを守っている人なんて見たことがない。

 賃金の踏み倒しやそもそも賃金を支払われなかったりなど理由は挙げればキリがない。


「運良く解放されたとしても普通の仕事がない。紹介してくれる伝はないし、奴隷だったという経歴だけでマイナスになる。」


 結局裏の仕事についたり、犯罪に手を染めてしまい犯罪奴隷になるというサイクルになる。

 好きで奴隷なった人なんていないのに誰もそこから手を差しのべてはくれない。なら私がその第一歩を作ればいいじゃない。幸いうちのオーナー()は商会をまだまだ大きくするつもりがあるからね。

 従業員を一から育ててしまえば何処かの産業スパイが紛れ込んでくる心配等が少なくなる!それと、うちのお抱えの技術職の後継者問題も減らせる!と思ったんだけど。


 今まで怖くて母に提案書を出せなかった。


 私の常識や判断基準は限りなく前世の物差しで考えてしまう。

 此方の世界の当たり前を壊しても良いのだろうか?奴隷を雇用することによって本来雇用される人が逆に職につけなくなるなんてことが起きないのだろうか?


 奴隷だった人たちが技能をつけることによって良い方に転がるのか、それとも悪い方に転がるのか。わからなかったから提案出来なかった。確信が持てなかったから話せなかった。責任をとれる立場じゃないから言い出せなかった。


 だからこの世界の事を勉強した。歴史は繰り返すと誰かが言っていたからひたすら歴史書を調べた。

 数百年前まで奴隷を解放するという考えはなかった。奴隷になれば一生涯奴隷。それが百年前からは奴隷の労働期間を設け、お金を払えば解放するまでになっている。

 なら、そこに雇い主が奴隷に技能を教えてから解放しても問題ないのでは?試験運用として本店のある地域限定で行うとかね。

 ここで実績を作ることによって後々後生で事例として残るのではないかな?私の代でどれだけ変わるかわからない。けど、試してみる価値はあるのではないか?


 それが2ヶ月前に自分の中で出した結論。いつの間にかプレゼンまで作り終えてた。


 一人で戦う勇気がなかった。だが、今は違う!目の前に推しがいる!この人のためなら私は新しい常識を()じ込む!!


 ふぅ、と一つ息を整える。ここまで勢い良く私の考えをシンに伝えた。どう反応が反ってくるかちょっとドキドキする。


「……一ついいか?」


「どうぞ?」


「どうして、俺だったんだ?扱いやすそうな奴は他にも居ただろう?」


 うっ、それを言われると困るなぁ~。貴方を前世から応援してましたなんて言ったらヤバイ奴じゃない!

 内心バタバタと大慌て。(おもて)はニコニコして疑問に答える。


「それはね、貴方の眼がまだ諦めてなかったから、かな。正直わからない。悩んでいたときに貴方に出会ったんですもの。」


 嘘は言っていない。強いて言えば推しアンテナが反応したから、だろうか?


「秘書とは具体的に何をするんだ?」


「私の秘書は基本的にはロベルトのもとで執事の基本を覚えて貰うのと、スケジュール管理。後々私の事業の手助けをしてほしいの。」


「期限は7年なのは私がいつかは嫁に行くから。学業を疎かにするわけにはいかないでしょ?右腕が欲しいの。」


 弟と家督争いは今のところはない。そもそも良好の関係だし、余計な横やりをつけられる前にさっさと嫁に行ってしまった方が平和だもの。


「7年後。働きによっては事業が軌道にのっていれば、商会から独立し奴隷から解放された貴方に事業をあげてもいいわよ?」


 まだ、たらればの域から出ていない。


「正式な契約は1週間後。商会のオーナーである母が帰宅後に私がこの案を提出します。……うまくいかなくても先ほども伝えた通り、下男の仕事があるから安心してね。それまではゆっくり考えて下さいね。」



 コンコンとノックの後にタイミングよくロベルトが入ってきた。


「お食事をお持ちいたしました。」


「丁度良かった!ロベルト、母が帰ってくるまで彼を用心棒部門の所で基礎を仕込んでおいて下さい。シン、時間は有限です。用心棒部門で体力をつけるように。明日は訓練は休みだから明後日から基礎を教わりに行きなさい。」


「なんで秘書に用心棒の基礎が必要なんだよ。」


「コレ!お嬢様に向かってなんて口をきく!……ゴホン!お嬢様、僭越ながら基礎の間に言葉使いを直すよう矯正してもよいでしょうか?」


「そうですね、人前に出しますもの。人前では丁寧な言葉が出るようにしてください。」


「おい!俺の質問に答えろよ!」


「必要になるからよ。あと、あなた牢に入れられて体力がおちているだろうし。」


 ニコリと微笑み今日一番の笑顔を返す。


「最初はキツいだろうけど頑張ってね。」



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