30話
また、呪いか……。
「話がループしているみたいだけど、結局は呪いが全ての始まりであり身バレの決定打になったのさ☆」
魔法使いはイタズラが成功した子どもの様に笑う。
「そもそも、君。実はなーんにもボロを出していないんだよ?」
「じゃあ……、あんたは呪いをみて、俺の出生を暴いたというのか……?」
そんな、まさか。信じられない。
俺は驚きのあまりに持っていたワインボトルを離してしまった。
重力に従って落ちるワインボトルを「もったいない」と魔法使いが一言呟いただけでワインボトルは浮き上がり自らテーブルの上に浮遊し着地する。
「仮に…仮にだ。俺が魔法を覚えて、あんたにメリットになることは何だ?」
魔法使いの狙いがわからない。
世界征服や呪った相手に呪い返すなど、壮大な夢物語である。俺一人でやるには中々に容易なことではない。
純粋に俺に魔法を覚えさせたいと言われても胡散臭くて素直に信じられない。
「えー、メリット~?んー。」
少し間があったが、魔法使いはゆっくりと告げた。
「それはね~。今まで数多くの教え子の中にに王族はいなかったし~。教えるならやっぱり王冠とってもらった方が面白そうだし~。ま、暇潰しだと思ってくれて構わないよ☆」
動機はかなりふざけていた。
「あんたから魔法を教えて貰うとしても!絶対に俺は王冠はいらない!!王にはならない!!絶対にだ!!!」
俺は怒りのままに立ち上がり、ヘラヘラと笑っている魔法使いを怒鳴った。
「ふざけるな!俺は、お前の玩具なんかじゃない!」
「だったら、玩具にされないように力をつけろ。」
今までヘラヘラとしていた魔法使いが真顔で言う。
「その呪いは血族自体を呪う。古式な呪術だ。魔法を覚えなければ、君の周囲は呪いに巻き込まれるだろう。」
「それは、お得意の魔法でわかったことなのか……?」
「…いいや。魔法を使うまでもないね。……それよりも~!立ち上がったなら丁度いい!厨房からおつまみ持ってきて!」
また、話を煙に巻かれた。これ以上は関係ない話をペラペラと喋るだけになるだろう。
俺はおつまみの件は置いておくとして、頭を冷やしに部屋から出ようとする。が、ドアノブに手をかけようと腕をのばすとガチャリ、とドアが開いた。
そこには後から来ると言われていたレイモンドが俺をジッと見下ろしていた。




